だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、平成30年司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

平成30年度重要判例解説(後半)

平成30年度重要判例解説 (ジュリスト臨時増刊)

平成30年度重要判例解説 (ジュリスト臨時増刊)

 

 重判勝手にランキング、後半は民事系&刑事系です。ここのところ、仕事が忙しく更新が遅れがちですみません~。※4月28日 加筆修正

民法

  1. NHK受信料債権と民法168条1項前段 C
  2. 滞納処分による差押え後の賃借権と明渡猶予制度 C
  3. 被担保債権が免責債権の場合の消滅時効 C
  4. 自動車割賦販売において留保所有権を代位取得した保証人による別除権行使 B
    → 学問的には最も面白かった。所有権留保の法的構成はいつでも問題になりますね。出題はされないと思いますが、勉強のために読むのは可。
  5. マンション管理組合理事長の解職 C
    → 実務的にはよくある紛争でしょうか。
  6. NHK受信契約の成立 C
    → 参考文献のハーバーマスの方が面白いです。
  7. 自賠法16条1項の直接請求権の性質 C
  8. 親権に基づく子の引渡請求と権利濫用 C
  9. 共同相続人間における相続分の譲渡が遺留分算定の基礎財産に算入される贈与にあたるか B
    → これは一応読んだ方が良いですね。相続分の譲渡の法的性質に、新たな1頁が付け加えられたという感じです。
  10. 第一種財産分離の要件 C

…民法は不作ですね。というか、単に私が民法が苦手すぎて、何が重要なんだかよくわかっていない、という説もありますが。私には、どれも試験向きの判例にはみえませんでした。

商法

  1. 不動産に対する商事留置権の成否 B
    → 深入りすべき論点ではないので、すぐさま論パに落として、ごくまれに確認するという感じでしょうか。もっとも、田澤先生の解説にある通り、建物敷地について建物建築請負人の商事留置権と、抵当権(多くの場合、建築資金を融資した金融機関…)が競合した場合に、どう処理するんですかー!という問題は実務的にも学問的にも大変意義深いと思います。
  2. 他人名義での払込みと有限会社の社員となる者 C
  3. 株主総会の特別決議を経た新株の不公正発行 A
    → 事例判決です。が、典型論点(不公正発行)からの「ひねり方」という意味で、出題可能性が無いとは言えませんし、福島先生の解説もわかりやすく、会社法の理解が進む判例であると思います。
  4. 株主総会決議不存在確認の訴えにおける確認の利益 C
  5. 取締役解任の正当な理由 C
  6. 取締役解任を総会議案とする取締役会決議と特別利害関係 B+
    → 3.と同様に、ひねり加減がかなり司法試験向きの判例です。現場思考でもそれなりの事は書けそうですが、一応読んでおくと安心。
  7. 防衛策検討のための法律事務所への委任と善管注意義務 B
    → ちょっと難しいですが、高裁が、株主の共同の利益が害される虞がある場合に、M&A防衛策を講じることを検討するのが善管注意義務に含まれる的な考えをしめしたことが意義深いです。
  8. グループ会社授業員に対する親会社の信義則上の義務 C
  9. 資本金額の減少と「債権者を害するおそれ」 C
  10. 吸収分割における承継債権者と信義則による保護 B+
    → X会社「Zビルでの事業がうまくいかないや~ もう貸主Yに賃料払いたくないな。そうだ、Zビルでの事業は会社分割でZ社に承継させちゃえ!」…という、会社のダメな事業を取引先ごと切り捨てる、という意味での詐害的分割です。これも典型論点のひねりバージョン。あくまで事例判断ですが、問題意識を共有しておくと良いと思います。
  11. 自賠法16条1項の直接請求権の性質 C
    → 民法7.と同じ判例です。
  12. 自動車保険契約と請求権代位 C
  13. 有価証券届出書の虚偽記載と民訴法248条類推適用 C

商法も不作だ…。でも、司法試験的な事例判決が民法より多い気がするので、読んでおくと安心です。

民事訴訟法(倒産法除く)

  1. 日本舞踊の名取の地位確認請求と法律上の争訟性 B
    → 法律上の争訟性のあてはめ例が学べます。我妻先生が、本案のあてはめまでわかりやすく解説していてとても良いです。
  2. 詐害防止参加・権利主張参加の要件 B
    → 詐害防止参加につき、訴えの利益として訴訟物レベルの択一・先決関係が必要、権利主張参加につき訴訟物の非両立関係が必要とした判決です。
  3. 仮執行宣言付き判決後の弁済が任意弁済と認められるか C
  4. 差押命令の申立書に請求債権として記載されなかった申立日翌日以降の遅延損害金が充当の対象となるか C

民訴法は読まなくても良いかも。

刑法

  1. 糖尿病男児に対するインスリン不投与の指示と、その母親・父親との共犯関係 B
    → 被告人を妄信し「藁をも掴む気持ち」で被告人の指示に従った母親を利用した間接正犯が成立するとした事例です。刑事未成年でない第三者の行為を利用した間接正犯が初めて認められたことに意義があります。
  2. 現金の交付を求める文言を述べていない場合の詐欺罪の実行の着手 A
    → クロロホルム殺人事件決定の枠組みを詐欺罪にあてはめ、現金の交付を求めるための嘘(預金を下ろして現金化する必要がある等)を述べた行為に実行の着手を認めました。和田先生の解説は(毎度のことですが)とてもわかりやすく、射程分析も含まれているので必読です。
  3. 欺罔行為後だまされたふり作戦開始に気づかず共謀の上関与した受領行為と詐欺未遂罪の共同正犯 A
    → おすすめされなくてもみんな読みますよね。重要判例です。なお、承継的共犯については、橋爪説(中間説)が最も判例と親和性が高いでしょう。①承継的共犯+②不能犯の「書き方」についても勉強になります(①が肯定されれば、②は言及不要)。
  4. 強姦等の犯行の様子を隠し撮りしたビデオは犯罪供用物件にあたるか C
  5. 保護責任者遺棄罪の「不保護」の意義 B+
    → 抽象的危険犯か?(準)具体的危険犯か?など理論的にも意義深く、近時の社会問題でもあり、あてはめの勉強にもなるので一応読んでおくと良いと思います。
  6. 現住建造物等放火罪に該当する行為により生じた死傷結果の量刑における考慮 C
  7. 赤色信号を殊更に無視して運転する意思を暗黙に相通じた行為と、他車による死傷結果を含む危険運転致死傷罪の共同正犯 C
  8. 自動車運転者の救護・報告義務の履行とは相容れない行動と道交法違反 C
  9. 被害者の自動車にGPSを取り付けて位置を探索する行為と、ストーカー規制法 C

刑法はそれなりに豊作ですね。特に実行の着手にかかる和田解説は非常にわかりやすく、おすすめです。

刑訴法

  1. 証人氏名等の秘匿制度の合憲性 C
  2. 刑訴法382条の解釈適用の誤り、訴因変更を命じまたは積極的に促す義務の存否 B+
    → いずれの論点もなかなか「参考裁判例」がないため、そのあてはめ方が勉強になります。
  3. 査察官報告書の証拠能力 B
    → これも321条4項のあてはめ方勉強ですね!
  4. DNA鑑定の信用性 C
  5. 取調べ録音・録画記録媒体の証拠としての扱い A
    → これは、理論的にも、「推認過程」のあてはめの勉強的にも結構重要かな、と思います。しかも超わかりやすい川出解説!というわけで、総合的にAランク。出題可能性もそれなりにあると思うので、別の機会に記事にします。

刑訴法は、ぼちぼちでした。

まとめ

 全体的にみると、読むべし!判例は多くない年のように思います。昨年(平成29年度)の方が多かったですね。憲法・行政法はそもそも判例学習の重要度が高い(下記記事参照)ので、読んでおいた方が良いと思います。 

 刑法・刑訴法は法理判例(場合判例)があったので、論パを少し加筆・修正すべきかもしれません。商法は「司法試験っぽい」判例が多かったので、読んで思考枠組みを再現できるようにしておくと、安心だと思います。