だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、平成30年司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

会社法の学び方

会社法の学び方 (法セミLAW CLASSシリーズ)

会社法の学び方 (法セミLAW CLASSシリーズ)

 

・説明が わかり辛い ★★★★★ わかり易い

・内容が 意識高い ★★☆☆☆ 基本的 

・範囲が 深掘り的 ★★☆☆☆ 網羅的

・文章が 書きづらい ★★★★☆ 論証向き

・司法試験お役立ち度 ★★★★☆

・ひとことで言うと「ちょっとハイレベルだけど分かりやすい副読本」

最近、最も面白かった本

 まず、筆者は商法が得意好きです。かなり色々な本を読んでおり、好きな本もたくさんあります。全部オススメしたいところなのですが、近時の商法の(学生向け)書籍の中でも、最も面白かった!すごい!と思った本をご紹介します。なお、司法試験との関係で言えば、私は会社法 第4版 (LEGAL QUEST)Law Practice 商法〔第3版〕、すなわち、最もベーシックな基本書&演習書をやり込めば充分だと思いっています。

会社法の学び方の内容

 会社法の論点17個を論じる、論点集です。「論点」といっても、「取締役の会社に対する責任」「少数株主の締め出し」という広いものですから、一つの条文の解釈=狭義の論点、ではなく「テーマ」や「トピック」といった方が良いかもしれません。
 内容のレベルはかなり高く、正直、司法試験に出るか出ないかまさにギリギリ、といったものです。例えると、

www.daitai.net

 のさらにちょっと難しい商法版というところです。
 著者の久保田先生のはしがきを要約すると、当初「会社法の基礎」と題した法セミの連載で、①「それについて知ると会社法のことがよく分かるのに、多くの教科書では十分に説明されていなかったもの」②「近時のホットトピック」を取り上げていったところ、「基礎」というイメージからは少し離れた内容も含まれてしまった、とのことです。

 この本の最も素晴らしいところは、当初の「基礎」と名付けていたことからもわかるように、「かなり発展的な問題 又は理解が難しい問題」を「誰でも知っている基礎的な概念、原則、条文の趣旨から→演繹して説明する」、すなわち、上記の①②の論点について、③「基本はこうである→よってその応用はこうなる」という法的な論証の最良の見本(のひとつ)を、久保田先生が提示してくださっているところです。
 よく学習者から、「そんな難しい論点は知りませんでした」「知識が無いので書けませんでした」という話を聞きますが、門外漢の筆者からすれば、「じゃあ、その論点ズバリじゃなくても、論点に関連する基本的な知識はわかってるの?」と思ってしまいます。今日、AIでさえズバリのデータが無くても推論するんですから、人間ならなおさら、応用力を効かせて欲しいものです…。

 あ、愚痴っぽくなってしまいましたが、とりあえず、本書の内容をイメージしてもらうために具体例を上げてみます。各論点についての、具体的な書き方なんかは、機会があったらまた記事にします。

①「意外と説明が不十分な論点」の例

(よくある説明)「新株発行の無効事由」でいうと、新株発行につき、株主はこんな利益を有していて~取締役はこうで~転得者や債権者などその他の利害関係者もいるから~無効事由はこうなる。なお、非公開会社については、転得者がいない等、事情が異なるから、無効事由はこうなる。→ ふーん、そういうもんね。

(本書の構成)そもそも、公開会社と非公開会社は制度設計が違う。株主が会社に期待していること、株式に対して重視している利益も違う。株主総会開催コスト等、取締役側の利害状況も違う。それぞれの制度設計・利害状況の違いからすれば、無効事由はこうなるはずである。

 → 新株発行の無効事由を再度学び直すことで、制度設計についての理解が深まり、論証はきれいになり、未知の論点への対応力がつく。なお、説明それ自体は、具体例(非公開会社では…株主が役員として報酬を得るなど、持株比率と結びつく経済的利益も少なくない 本書134頁)を交えつつ、簡潔かつとてもわかりやすい。

②「近時のホットトピック」の例

 例えば、やや簡単な所でいうと、支配権異動特則(会社法206条の2)関係の法令違反は、無効事由となるか、という論点。工藤北斗先生も取り上げていますが(工藤北斗の合格論証集 商法・民事訴訟法)、正直、本書の論証が一番わかりやすく、美しいと思います。
 非常にシンプルで、公開会社における判例の実質的な判断基準は、差止めの機会の確保にある→実質的に差止めの機会があったといえるか→(金商法上の開示等も含めて)差止めの機会があるとはいえないことがほとんど→よって無効事由。というものです。

 ちょっと難しいものでいうと、非公開会社において、新株発行に必要な株主総会決議を欠くことは無効事由とされていますが(最判平成24年4月24日民集66巻6号2908頁)、じゃあ、非公開会社で、新株発行に必要な株主総会決議に取消事由があった場合はどうなるでしょう。この場合、株主総会決議取消訴訟の提訴期間3ヶ月(会社法831条1項)は遵守しなければならないでしょうか?等。難しいので、考えてみて下さい。

会社法の学び方の用途

 上記の①にせよ、②にせよ、ある程度会社法の学習が進んでいることが前提条件でして、少なくとも会社法 第4版 (LEGAL QUEST)くらいは読了した上で副読本として読むべき本です。そのうえで、

 会社法を読むだけで泣けてくるくらい苦手な人(よくいますよね)は、①による会社法の理解を狙って読む価値があります。

 会社法を読むだけでニヤニヤしてしまうくらい好きな人(あまりいませんね)は、②による司法試験高得点を狙って読む価値があります。最初に述べた通り、本書のレベルはかなり高いのですが、とても司法試験に出ません、というものではありません。上記の、非公開会社で、新株発行に必要な株主総会決議に取消事由があった場合はどうなる?は出題されても文句は言えない(ギリギリ)でしょう。

 また、本書は220頁と薄いので、息抜き的にも読めます。「基本はこうである→よってその応用はこうなる」という、③あらゆる科目で「感じが良い、と評価される答案」の基本的な作法を学ぶために読むのも、楽しいと思います。