だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

民事訴訟法概論と、書きやすい文章

民事訴訟法概論

民事訴訟法概論

 

・説明が わかり辛い ★★★☆☆ わかり易い

・内容が 問題意識高い ★★★☆☆ 基本的 

・範囲が 深掘り的 ★★★★☆ 網羅的

・文章が 書きづらい ★★★★☆ 論証向き

・司法試験お役立ち度 ★★★★☆

・ひとことで言うと「高橋説が馴染めば最強の基本書」

薄い本で全体をつかむ

 民訴は難しいですねぇ。平成30年司法試験も難しい、というか出題趣旨が把握し辛く←こういうのは単なる勉強不足の言い訳です、私は唯一Bをとってしまいました。残念。
 民訴が「眠素」となっている理由は色々ありますが、その中でも最強なのは、訴えと請求の概念、訴訟物の概念、当事者の概念… と、学習のスタートの段階で、抽象的概念を色々と教え込まれるのですが、それが何の役に立つか、サッパリわからない。ということにあります。だいたい、最初で嫌いになって、そっから先はずーっと苦手、という人が多発します。

 そこで、よくオススメされる民訴攻略方法が、「とりあえず薄い本を通読して民事訴訟の全体像をつかめ」というやつです。これは間違いなく正解です。既判力がわからなければ、訴訟物も当事者もわかりません。逆もまたしかり。
 基礎からわかる民事訴訟法も、民事訴訟法 第3版 (LEGAL QUEST)も、とても良い本です。が、これら(600~700頁)を1通読する時間があれば、薄い本なら1.5~3通読!することができ、民訴の全体像をより迅速に頭に叩き込むことができます。
 薄い本の圧倒的オススメは、民事訴訟法 第2版 (有斐閣ストゥディア)なわけです(なんと290頁)が、その対抗馬(400頁)が本書です。

民事訴訟法概論の内容

 ①まず、とにかく薄いです。これにより、上記の通り民訴の学習に必要不可欠な、「全体の見通し」が早くつかめます。なお、網羅性もかなり高く、この本を何度も通読しておけば、試験当日、全く知らない論点に出会う確率はかなり低くなると思います。

 次に、本書の特徴として、400頁に削ぎ落とした結果でもありますが、②記述が非常に簡潔明瞭で、「ほとんど答案じゃん」という「書きやすい文章」になっています。
 例えば、本書241頁。まず、見出しで「(3)訴訟上の和解の効力は、どう考えるか」とあり、これは答案上の問題提起そのものです。これに続く回答も、

…和解は当事者の合意による自主的紛争解決であり、裁判官の判断という既判力の前提を欠く、当事者の合意に基づく以上、無効・取消しという意思表示の瑕疵を救済しないのは妥当ではない…から既判力は否定すべきである…

と簡潔にまとめられており、これまた、そのまま答案に書くことができます。
 もっとも、「文体」が書きやすいかどうかは別物で、高橋先生独特の言い回しが多数登場します。「色彩を帯びる」とか。民訴の答案を読むと、この人は高橋説だな~とすぐわかります。これさえ気にならなければ(私はむしろ優美で好きでした)、最強の「書く教科書」の一つだと思います。

 ③学生に対する学習のアドバイスがたくさん出てきます。「長く教師をしているおかげで、学生諸君がどこでつまずくか、多少の見当が付きます(本書はしがきより)」。以前書いた、「基本書の読み方」についてのアドバイスも出てきます(本書12頁)。
 もっとも感銘を受けたのは、

学生諸君の答案…では…なにを論じても必ず手続保障ないし不意打ち防止に結び付けなければ気が済まないようである…民事訴訟法の解釈は適正・公平・迅速・経済という理想をどうバランスさせるかがより重要であり、手続保障一本槍では単なるスローガンに堕してしまう。精密に分析し、考え抜かれた論拠を持ち出さなければ説得力は生まれない。…複眼的でなければならないのは民事訴訟法の解釈だけではないであろう…

というアドバイスです。ううむ。かっこいい。アドバイスも美文です(主観的には)。

 この様に、民訴法学習の方法、法律学習の方法をも提示してくれるのが、本書の大きな特徴の一つです。

民事訴訟法概論の使い方

 高橋語さえ気にならなければ、民訴法の「最初の一冊」としてかなりオススメできる本だと思います。新堂説・高橋説が全面にわたり展開されており、それを不安に思う方もいるかもしれません(判例じゃないの?的な)。しかし、司法試験・民事訴訟法は、「○○っていう判例があるよね、でも本件は○○とは違うよね、じゃあどうなるかな?」という出題パターンが大好きです。つまり、判例の事案だけを知っていても意味が無いわけです。こういった問題に対処するためには、判例との事案の違いを説明した上で、民訴法の原理を踏まえ、自説を説得的に論証することが有用です。
 本書より100頁薄いストゥディアは、判例を紹介した後、「こういう学説の批判もあるよ」という紹介が1,2行あるだけですので、上記の様な発展的論点に対応するためには、プラス100頁分くらいの論証集を「足す」必要があるでしょう。それに比べると、本書は、上手く使えば「基本書でありつつ、全論点を網羅し、そのまま書ける論証集でもある」という、まさに「これ一冊本」として使える可能性があります。これ+判例百選で民訴は終わり、みたいな。

 本書の(高橋語を除く)デメリットは、やはり、「400頁で民訴の全論点の判例を紹介し、自説を論じる」という常人では絶対不可能な内容を達成した副作用で、説明や理由付けがやや簡潔すぎる(憲法学読本と同様)ということです。これに関しては、とりあえず本書をメインウエポンとしておき、わからない部分は別の本で調べる、という使い方が良いと思います。本書のお供となるべき本としては、 

読解 民事訴訟法

読解 民事訴訟法

 

 がオススメです。重点講義民事訴訟法は、同一著者なので複眼的な説明を得ることがやや難しいです。民事訴訟法 第3版 (LEGAL QUEST)はとても詳しく、新堂・高橋説も解説してくれるのですが、本書とは反対に、判例&三木説推しなので、本書との相性はあまり良くないように思います。読解民事訴訟法は、割と中立的に判例・学説対立をみていく本で、相性が良いです。