だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

まとめノートの作り方2(素材選び)

 下記の前回記事では、①そもそもまとめノートとは何なのか、②作る必要があるのか、等を考察しました。だいたいの結論としては、①基本書等>まとめノート>論証集という情報量であり、かつギリギリの網羅性のある編集物である、②勉強が進んだ人か、よっぽど苦手な人以外は作る必要はあまりない。というものでした。

 筆者のまとめノート作成状況の概略も、同記事でお示ししましたが、その後も「どんな論証集使ってましたか?」「工藤北斗先生だけマスターすれば合格しますか?」等の質問が相次ぎましたので、まずは、最も重要な「素材選び」について書きます。次回は、(筆者なりの)具体的な作成方法を紹介しようと思っています。

素材(母材)選び

減算法と加算法

 さて、完全自作(ゼロベースでWord等でノートをまとめること)でない限りは、まとめノートは、何らかの市販の教材を加筆・削除・修正して作ることが一般です。その際、論理的には、①まとめノートとするには厚い教材(基本書等)から、重要度の低い情報を削除していくーという減算的な方法と、②まとめノートとするには薄い教材(論証集等)に、自分の必要な情報を足していく、という加算的な方法があるかと思います。このうち、ほとんどの人が②をとると思いますし、私も②がメインでした。従って、本稿では②を前提とした素材の選び方を検討します。

減算法に向いている基本書等

 一応、①減算方法に向いている(すなわち情報量多め)と私が思う各教科の基本書等を、下記に貼り付けておきます。

加算法に向いている論証集等

 本題の加算法です。まず、予備校に通われている方は、該予備校の論証集を使うのがベターと思います。予備校の当然の戦略として、本当に重要なモノは市販しませんもんね。伊藤塾の論ナビ?は少し拝読しましたが、良く出来ていたと思います。ただ、ちょっと情報量が多い気がしますね。筆者を含む非予備校生はどうするかーというと、現状はほぼ三択+αではないかと思います。

  1. 工藤北斗先生の論証集(工藤北斗の合格論証集 刑法・刑事訴訟法
  2. 伊藤塾のテキストにくっついている論証カード(刑法総論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ 1) 等)
  3. 趣旨規範本(趣旨・規範ハンドブック〈1〉公法系〈平成29年度版〉) 
  4. 中央大学真法会の論証集(司法試験合格のための論証集&答案構成ノート

論証集を選ぶ際のポイント

 これらの中から、自分にフィットした論証集を選びましょう。というのが結論ですが、それ以前に、「司法試験の論点が全部網羅できてるのか、気になる(情報の量の問題ー網羅性)」だとか、「現在の判例に照らして通説的な見解なのか、気になる(情報の質の問題ー正確性)」という方は多いと思います。

①網羅性について

 まず、網羅性についてですが、これはあまり気にする必要はありません。
 上記の書籍は、各執筆者がそれぞれ「これだけの論点を潰せば司法試験は受かる!」という自信を持ってプロデュースしたものです。確かに、A論証集には載っていてB論証集には載っていない、という論点は多々存在するものの、それは大局に影響を与えない誤差の範囲内のはずです。

 また、コメントでも述べましたが、ほとんどの受験生がA.適切ではない論証集を選択したために落ちる、のではないのはもちろん、B.潰した論証集に掲載されていない論点が出たから落ちる、のでもなく、(後述の通り)C. 潰したと勘違いしているだけで論証集を潰し切れず、論理構造を精確に理解できていないために落ちるのだと思います。典型論点からちょっとひねった問題が出されると、(文字通りの暗記しかしていないために)「論証集に載っていない問題が出た!わからん!」…となる、ということです。

②正確性について

 次に、正確性についてですが、これもあまり気にする必要はありません。そもそも、法学という学問、そして日本語という言語の特性上、どんな書籍にも必ず間違いはあります。判例百選でもしかり、このブログに至っては間違いだらけの大運動会です。そして、後述の通り、このような「小さな間違い」に気づき、修正していくことで、実力がついていくものだと考えられます。確かに、極端に古い学説や、既に変更された判例に依拠されてはたまりませんが、そこまでの「大間違い」は、後述の通り、上記の書籍には存在しません。

売れている論証集ならだいたいOK

 そして、これらのポイントからすると、上記の各書籍は、「別にどれを選ぼうが大きな差はつかない」というのが現実です。日本は(再販制度は怪しいですが)自由主義経済なので、とりわけ優れた論証集があるとすれば、既に市場を席捲しているはずです(下記記事も参照)。上記の書籍は、一定の①網羅性・②正確性を充たす、と判断されているからこそ、版を重ね、市場でそれなりの信頼を得ているわけです。

 今しがた、この理論の正確性を確かめようと思って、Amazonの英単語集のランキングを確認して驚愕しました。TOEIC用・教養用等を除いた大学受験用と思わしき英単語集のランキング上位には、「DUO」「システム英単語」「英単語ターゲット1900」の三強が顔を出しており、なんとこの三強状態は筆者が受験生だった20年前と変わっていません…。まあ、そういうことです。要するに、どれも優秀な単語集なんですね。どれを選ぶか、ではなくどれでも良いからきちんと潰す、ということが大切という訳で、これは論証集も同じことです。

重視するポイント③書きやすさ

 はい。何を買っても同じです。としてしまうと、それはそれで嘘ですね。効能が全て同じであれば、低価格の書籍が市場を席捲するはずです(笑)。私が論証集を選ぶ際にまず重視していたポイントは、上記①②のいずれでもなく、③論証と文体の書きやすさ、です。

 一般に、論証を精確に覚えろ、と良く言いますがその言わんとしていることは、論証の一字一句を精確に覚えるのではなく、論証の論理構造(規範ー理由付け)を精確に覚えろ、ということのように思います。異論のある先生もいらっしゃるとは思いますし、一部の規範(行政法の原告適格であるとか)は一字一句覚える必要がありますが、少なくとも最も重要なのは論理構造の把握です。さもないと、前述の通り、多少ひねった問題が出されると、途端に応用が効かないということになりかねないのです。工藤北斗先生もはしがきでそのように書かれていたような(今てもとにありません)。

 そして、司法試験の特色は、その論理構造を実際に答案として吐き出す(アウトプット)にあるわけですから、やはり、自分にとって論理構造を再現しやすいー書きやすい論証・文体の方が良いに決まっています。記憶(インプット)という点でも、書きやすい文章ー覚えやすい文章だと思います。そして、これが最も重要な点なのですが、自分にとって書きづらい文章の論証集を選んでしまうと、後々の加筆・修正作業が膨大なものとなってしまいます。

 以上より、これは完全に主観的な判断となるのですが、上記の書籍の同一論点にかかる論証パターンを見比べ、何度も脳内で繰り返してみて、自分に一番しっくり来る論証・文体のものを選択することはおススメできます。

重視するポイント④他の教材との相性

まとめノートはチームメンバー

 次に、もう一つ私が重視していたポイントは、④他の教材と組み合わせて使いやすい、という意味での相性です。

 そもそも、まとめノート(やその素材となる論証集)は、前回の記事でも述べた通り、他の教材と組み合わせて使うものです。某論証集がいかに優れているとしても、文字通りその一冊だけで司法試験に合格する、という方は1000人に1人の天才かと思われます。

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 …あ、今この図をみると、体系性は大小ではなく高低ですね。やはり、このブログにも間違いはたくさんあるという証拠がありました。

 このように、所詮まとめノートも各教材との「チームワーク」で使用していくものですから、仮に過不足(①網羅性)や、間違い(②正確性)があったとしても、それはまさに(基本書等を参照した)加筆修正で対応していけば良いことです。というより、そのような意味で論証集を潰さないと、その論理構造を精確に理解することはできません。そういった意味で、前述の通り、①網羅性・②正確性はそれほど重要ではない、と考えているという訳です。これは常識の類に属するものと思いますが、めちゃくちゃ重要なことなので赤太字にしてみました。

 「チームワーク」的な用法を前提として素材となる論証集を選ぶと、また違った要素が重要となります。つまり、他に使用している or 使用を予定している教材と親和性が高いか、という観点です。

内容的な相性

 相性にはさらに二つの要素が含まれており、一つは内容的な相性(情報の質の問題)です。刑法で例えれば、今日では判例もとらないような先鋭的な行為無価値論をとる論証集と、山口先生の基本書では言っていることが正反対、とならないとも限りません。もっとも、現在では論証集も基本書も、かなり判例を意識し、それに依拠した議論を展開しているので、実は内容的な相性もあまり問題とはなりません。

情報量の相性

 それ以上に重要なのが、(単なる網羅性ではなく)他の教材との情報量の相性です。民法で例えると、上記に挙げた民法(全) 第2版は、基本書としては最も薄い(情報量が少ない)ものの一つで、かなり行間が広い書籍です。それ故に、上記ではほぼそのまま「まとめノート」として使えるものとして提示しています。これに対して、辰巳の趣旨・規範ハンドブック〈2〉民事系〈平成30年度版 2019年対策〉は最も厚い(情報量が多い)論証集の一つです。この二つを組み合わせると、「どっちの本にもその論点は載っているんだけど、どちらも記載量が不足しているために、よくわからん」ということが起こり得ます。反対に薄い&薄いという組み合わせですと、まさに①網羅性に欠けるー論点の存在を知らないまま勉強生活を終えてしまうという恐怖があります。

 このように、論証集を選ぶにあたっては、その論証集に比して2倍以上の厚さのある基本書とチームを組ませないと、双方の良さ(相互利用補充関係…)が活かせないように思います。

 筆者は割と厚めの基本書が好きで、そこからどれだけ情報量を絞り込めるかに血道をあげていましたので、論証集は薄めのものを選択していました。

各論証集の簡単な書評

 以上の通り、素材の選択にあたっては、①網羅性、②正確性はまあだいたい大丈夫でしょ、という前提のもと、③主観的な書きやすさ、④他の教材との相性を基準に選ぶと良い、と筆者は思います。そのような前提に立った簡単な書評を以下に記載しますので、参考にして下さい。薄いもの→厚いもの、という順に並んでいます。

  1. 中央大学真法会の論証集
    司法試験合格のための論証集&答案構成ノート

    司法試験合格のための論証集&答案構成ノート

     

    ①網羅性 ★★☆☆☆
    ②正確性 ★★★★☆
    ③書きやすさ(主観) ★★★★☆
    ④情報量 ★★★☆☆
    → 7科目全部入りなので、非常に薄くコスパも高いです。その分、網羅性は若干犠牲になっているものの、これでも全て精確に理解できていれば当然司法試験には合格するでしょう。論証・文体はムダな部分がそぎ落とされているので、勉強が進んだ方にはおススメできますが、初学者にはやや難しいかもしれません。非常に魅力的な論証集ですが、行政法&商法という筆者の二大大好き科目の内容が肌に合わなかったことと、B5サイズで大きすぎて筆者には使いづらかったことから、メインウエポンとはなりませんでした。

  2. 工藤北斗先生の論証集
    工藤北斗の合格論証集 刑法・刑事訴訟法

    工藤北斗の合格論証集 刑法・刑事訴訟法

     

    ①網羅性 ★★★☆☆
    ②正確性 ★★★★☆
    ③書きやすさ(主観) ★★★☆☆
    ④情報量 ★☆☆☆☆
    → 1科目あたり約100頁と、真法会と同等レベルの薄さ。なんだかんだ言って、(周囲では)最も売れている、という単純な理由でこれを選択しました。薄さについては、筆者はバンバン加筆していくので問題ありません。内容的には、百選の抜粋がほとんどなので、大きな間違いというのもありません。というより、百選等のページ数を記載してくれているのは大きなアピールポイントです。文体的には(百選抜粋なので)やや長いかな~と思うものが多かったので、適宜短く書き直していました。その方法等はまた別の機会に記事にします。

  3. 伊藤塾のテキストにくっついている論証カード
    刑法各論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ)

    刑法各論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ)

     

    ①網羅性 ★★★★★
    ②正確性 ★★☆☆☆
    ③書きやすさ(主観) ☆☆☆☆☆
    ④情報量 ★★☆☆☆
    → 筆者の論パ生活はここからスタート。最初は一所懸命覚えていたが、どうにもこうにも論証長すぎて、試験でこれを書いているだけで気分が暗くなってきます。「俺は記憶マシーンじゃねぇ!」。俳句好きの筆者としては、可能限り短い論パを求めて、早々に卒業してしまいました。また、内容的にも、「今やその見解はかなりの少数説では…」というものもたまに出てきます。なお、論点の網羅性は随一なので、論点数を求める人&伊藤塾文体が気にならない人にはおススメです。

  4. 趣旨規範本
    趣旨・規範ハンドブック〈3〉刑事系〈平成30年度版 2019年対策〉

    趣旨・規範ハンドブック〈3〉刑事系〈平成30年度版 2019年対策〉

     

    ①網羅性 ★★★★☆
    ②正確性 ★★★☆☆
    ③書きやすさ(主観) ★☆☆☆☆
    ④情報量 ★★★★★
    → 帯にあるとおり、論証集は通り越し、最初から完成されたまとめノートといえる圧倒的な情報量です。伊藤塾(の、論パカード)と異なり、「論点数」ではなく、要件事実論や判例の考慮要素にも踏み込んだ記載が多い、という意味で「情報量」が多いことには好感が持てます。もはやまとめノートも通り越して基本書なのでは。これを作成する努力、のみならず市販するという判断には頭が下がります。しかし、私の判断は「基本書には薄すぎ」「まとめノートには厚すぎる」というものでした(下記記事参照)。 

     また、ここまで完成されていると、加筆・修正をサボりそのまま暗記しようとする→結果的に論理構造が身につかない、という副作用が発生すると考えたこと、及び(大変失礼ながら)装丁のデザインが筆者には受け容れ難いものだったこと等から、採用ならず。もっとも、上記の通り、完成されたまとめノートであることから、「まとめノートの作り方」の参考例として購入するのも良いと思います。

 この記事の続編はこちらです↓