だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、平成30年司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

縮小認定の考え方2(論証パターン2段構え)

 さて、前回は縮小認定とは何か、特に訴因変更の要否にかかる平成13年判決との関係性を重点的に検討しました。インプットとしては、これで「だいたい終わり」です。一応、ここまでの理解をまとめた図を再掲しておきます。

縮小認定と、平成13年判決第1段階判断枠組みの関係

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縮小認定と、平成13年判決第2段階判断枠組みの関係

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縮小認定の「書き方」

 さて、ここまでの「だいたいの理解」を踏まえて、どう書くか、です。最も重要なのは、通説と川出説の違いは受験対策上は有意なものではなく、いずれで書いても大過ない、ということです。最後に述べる通り、「効果」の部分で大きな違いが出てきますが、いずれの説にせよ検討するのは不意打ち的認定でないかどうか、ですから、通説的に把握しておいて何の問題もないかと思います。

 「おい!じゃあわざわざ難しい学説の比較・対照なんてするなよ!」と思う方もいらっしゃるかとは思います。が、「①広げて深めて→②使える形でまとめる」のが勉強だと筆者は考えていますので、お付き合い戴ければ幸いです。

A.平成13年判決のあてはめ説

 受験生にとっての問題は、以上の内容を答案でどう表現するか、まあ平たく行ってしまえば論証パターンです。川出説ー訴因事実と認定事実には差異があるーを強調しまくると、結局、差異はあるじゃん。じゃあ、平成13年判決の判断枠組みを出して、差異が実質的にあるかないかを検討しても良いのでは?「本件は…(中略)いわゆる縮小認定の場合にあたり、審判対象画定に不可欠な事実に変動はない。よって、訴因変更は不要である」と、第1段階のあてはめとして縮小認定が登場しても良さそうです。

 が、危険な橋はわたらないのが受験生。上記の文章をよくよく読めば、両先生ともに共通している文意はー「表面的には差異があるけど、実質的には差異が無い」ということではないでしょうか。そもそも事実に差異が無いのであれば、縮小認定は、平成13年判決の「第1段階の判断が問題となり得ない「埒外」といっていいだろう(前掲事例演習刑事訴訟法 第2版215頁)。というのが通説的な見解だと考えられます。よって、やはり①平成13年判決のあてはめ説、は却下です。

B.規範を出す説

 そうすると、次の問題は縮小認定にかかる「規範」を出して、あてはめた方が良いかです。受験生たる者、法的三段論法(下記記事参照)を遵守するため、「死んでも規範は出す!」という方が多いかと思います。後述の通り、何が規範かはよくわからん、という部分もあるのですが、さしあたっては、上記の最判(最判昭和26年6月15日)が良いでしょうか。

 具体的な論証パターンは、こんな感じですかね。

(問題提起)訴因事実と認定(心証)事実とでは、差異があり、訴因変更(312条1項)が必要とならないか。
(規範①)認定事実が、その態様及び限度において訴因たる事実よりも縮小されているといえる場合、訴因変更は不要であると解する。この場合、認定事実は検察官により黙示的・予備的に主張されていたといえる。また、そうだとすれば、定型的に被告人に不意打ちを与えることも無いと考えられるからである。

(規範②)もっとも、争点明確化の要請から、具体的な審理経過から被告にとって縮小認定が不意打ちとなる場合は、裁判所は求釈明等、争点明確化の措置をとらなければならないと解する。

C.規範を出さない説

 もっとも、縮小認定は、認定しようとする事実が、検察官の当初の訴因に包含されており、黙示的・予備的に主張されていたといえるか、という問題です。解答者(裁判官の立ち位置ですね)としては、これを淡々と検討するだけです。従って、原則としては、縮小認定は何らかの規範に当てはめるという作業ではないといえ、規範を出さないで良い、という考え方ができます。

 具体的に言うと、「本件についてこれをみると…(規範に対応するあてはめ)」というよりは、「本件では…いわゆる縮小認定にあたる」という事実の評価で良い、というものです。

 この場合の論証パターン、というより答案例はこんな感じになりますか。

(問題提起は②と同様)
(事実の評価)本件で、訴因の罪となるべき事実は●●●である。認定事実である▲▲▲は●●●に包摂されているといえ、検察官により黙示的・予備的に主張されていたということができる。

 だとすれば、そもそも両者の事実に差異はなく、従って訴因変更の必要も無いというべきである。

論証パターン2段構え

ムダなことを書かないために

 ここまでの理解で、A.平成13年判決あてはめ説は危険だからとらないとしても、B.規範出す説、とC.規範出さない説をとり得ることがわかりました。後は好みの問題だね、終わり。でも良いのですが、模範的受験生としては、さらに踏み込んで検討しておくべきことがあります。

 それは、効率的に得点する≒ムダなことを書かず、論点だけを手厚く書くためには、どういった論証パターン(等)を準備しておくことが合理的か、ということです。論証パターンを一字一句覚えることだけが勉強だーと思っている方もいるかと思いますが、これはいけません。まとめノートにしろ、論証集にしろ、優れた答案を書くー効率的に得点するためにあるのですから、覚える論証パターンはそのような目的に沿ったものにモディファイしておく必要があります。

 縮小認定において筆者がオススメするのは、上記のBCの論証パターンを2つとも準備しておき、細かい論点の違いによって書きわける、というものです。各科目でよく登場する準備方法なので、筆者はこれを「2段構え」と呼んでいました。具体的には、Bの方が長いので、このように準備しておけば良いと思います。

(問題提起)訴因事実と認定(心証)事実とでは、差異があり、訴因変更(312条1項)が必要とならないか。
(規範①)認定事実が、その態様及び限度において訴因たる事実よりも縮小されているといえる場合、訴因変更は不要であると解する。この場合、認定事実は検察官により黙示的・予備的に主張されていたといえる。また、そうだとすれば、定型的に被告人に不意打ちを与えることも無いと考えられるからである。

※規範①は省略して、直ちにあてはめ、「▲▲▲は●●●に包摂されているといえ、検察官により黙示的・予備的に主張されていたということができる。だとすれば、訴因変更の必要も無い」としても可

(規範②)もっとも、争点明確化の要請から、具体的な審理経過から被告にとって縮小認定が不意打ちとなる場合は、裁判所は求釈明等、争点明確化の措置をとらなければならないと解する。

 問題は、長いバージョンと、短いバージョンをどう使い分けるか、です。使い分けないと、2段構えにした意味がありません。

B.縮小認定の規範①適合性を検討させる問題

 縮小認定が問題となる事例というのは、2つのパターンにわかれると考えられます。1つが、「そもそも縮小認定ができるのか」という規範①の適合性が問題となる事案です。すなわち、訴因事実が認定(心証)事実を包摂し、検察官が黙示的・予備的に主張していた、といえるのかーという問題です。この場合は、訴因と認定を対照し、その異同を明らかとし、包摂・被包摂関係を丁寧に認定する、というのがメインの作業となります。既述の通り、規範①は理論的には必ず出さなければならないという筋合いのものではありません。しかし、規範①を出しておいた方が、答案としては書きやすくなる可能性があるでしょう。すなわち、論パとしてはB(フルバージョン)を使うべきです。

C.縮小認定の規範②適合性を検討させる問題

 反対に、「不意打ち的な認定ではないか」という規範②の適合性を検討させる問題の出題も予想できます。具体的な審理経過の検討ー検察官の実際の予備的主張の有無、被告人の弁解や弁護人の主張、裁判所の求釈明、証拠調べにおける発問の有無ーなどから不意打ちかどうかを認定する、というのがメインの問題です。この場合は、規範①適合性、すなわちそもそも縮小認定にあたるところは、割とサラッと認定できることが多いと思います(さもないとメリハリがつかない)。そうだとすれば、長々と規範①を書くのはムダになる可能性が高いです。すなわち、論パとしてはC(短縮バージョン)を使うべきです。

出題趣旨の見抜き方

 最後に残った問題は、出題趣旨がBにあるのか、Cにあるのか、また重点はどちらにあるのかをどうやって見抜くか、です。これは別の機会に記事にしますが、(受験生にとっては常識と思いますが)問題文に記載されている事実の量、で簡単に見極めることができます。

 訴因事実と認定事実に関する記載の分量が多ければ、出題者はBをジックリ検討して欲しい、と考えているでしょう。反対に、具体的な審理経過が詳細に記載されていれば、Cを検討すべきです。

具体的な問題で実践

 まとめとして、縮小認定にかかる事例問題として、事例演習刑事訴訟法 第2版  設問15(同書204頁)を実際に問いてみたいと思います。問題文は、同書を購入するか、または図書館で見て確認して下さい。なお、下記記事もご覧下さい。 

問題文の読み方(答案構成)

 同問の問題文を読むと、一目瞭然。訴因と心証事実に関する記載が90%です。すなわち、出題パターンBですね。一応、「被告人の弁解どおり」という審理経過にかかる記載もあるので、Cもほんの少し検討しなければなりません。論パとしては、時間があれば、Bを出しておきたいところです。下記は、敢えて古江先生の見解で書いてみました。

解答例

 本問では、訴因と心証事実とでは、差異があることから、訴因変更(312条1項)が必要とならないか。

 心証事実が、その態様及び限度において訴因たる事実よりも縮小されているといえる場合、訴因変更は不要であると解する。この場合、認定事実は検察官により黙示的・予備的に主張されていたといえる。また、そうだとすれば、定型的に被告人に不意打ちを与えることも無いと考えられるからである。
 (もっとも、争点明確化の要請から、具体的な審理経過から被告にとって縮小認定が不意打ちとなる場合は、裁判所は求釈明等、争点明確化の措置をとらなければならないと解する。)

 本件でこれをみると、訴因では「被告人は、甲と共謀の上(中略)(乙)百貨店に侵入し、同所において、宝石10点を窃取した」として、建造物侵入罪・窃盗罪の共同正犯(刑法130条、235条、60条)にあたる事実が掲げられている。一方で、心証事実は「甲に乙百貨店の警備に関する情報を漏示して甲の犯行を容易にした」というもので、上記各罪の幇助(刑法62条1項)に該当する事実である。
 ここで、共同正犯とは、犯罪結果実現につき、共謀により重大な因果的寄与をなした者をいう。そうだとすれば、「共謀の上」という記載には、これに至らない因果的寄与、すなわち幇助の事実をも包含していると考えることもできる。
 しかし、そのように考えると、「共謀の上」という記載は、「ありとあらゆる因果的寄与」を表していることとなり、訴因の有する審判範囲の画定機能(刑訴法256条3項)と整合しない。また、幇助犯であれば検察官が不起訴処分にしていた、という可能性を考えれば、検察官処分権主義(同248条)を害し、不告不理の原則にも反する。

 よって、本件では心証事実である幇助が、その態様において訴因たる共同正犯の事実よりも縮小されているとはいえず、訴因変更を要すると解する。なお、このように訴因の制度趣旨に反することが縮小認定を認めない理由であるから、被告人の弁解通りの認定であること、すなわち被告人の防御の利益を害さないことは結論に影響を与えない。

効果について

 最後になりましたが、訴因変更の要否と、縮小認定に共通する問題として、訴因変更が必要なのにしなかったー違法な認定の効果、について付記しておきます。意外と文献で言及されることは少ないのですが、理論的には

 第1段階判断枠組み(審判対象の画定に不可欠な事実の変動)で訴因変更が必要だったのに、しなかった場合
→ 訴因外の事実を認定したものとして、絶対的控訴事由(刑訴法378条3号)となります。

 第2段階判断枠組み(不意打ち・不利益認定の防止)で訴因変更が必要だったのに、しなかった場合
→ 訴因による審判対象の画定(拘束力)とは無関係な違法なので、相対的控訴事由(同379条)にとどまる

 そうすると、縮小認定の場合は第1段階判断枠組みはクリアできるわけですから、仮に違法な認定があったとしても相対的控訴事由にしかならない、というわけです。ここは押さえておいて損はないと思います。さらっと書き加えておけば、印象が良いかと。