だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、平成30年司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

基本書の読み方2(基礎編・マーキング)

まずは「つまり読み」

 「法律学の勉強では、抽象、具体の循環、相互補強を試みなければなら」なりません(高橋宏志「民事訴訟法概論」(2016年、有斐閣)12頁)。基本書を読む際は、具体的な事例をイメージして、そして「つまり…」と要約して抽象的・一般的にまとめることが大切です。

 これは、基本書の内容を文字通り「理解」するために必要不可欠なことです。これが出来るようになったら、ではなく、これと同時にして欲しいこととして私がオススメするのが、マーキング読みです。

何のために基本書を読むのか

 そもそも、基本書って何のために読むのでしょうか。法律の趣旨、現実の利益衡量、これらを踏まえた解釈を知るためにある、というのが答えの一つでしょうか。もっとも、司法試験受験生にとっては、基本書を読むことを含めた全てのインプットは、アウトプット、すなわち法律答案の作成に活かされるものでなければ意味がありません。解釈を知っても、書けなければ意味が無いのです。

 私も法科大学院入学当初、非常に長い時間をかけて、じっくり基本書を読んでいきましたが、期末試験では全くまともな答案が書けず、成績も散々でした。そこで、アウトプットのためのマーキングとして、私が独自に編み出したマーキング手法がありますので、これをご紹介したいと思います。

オススメできないマーキング

 さて、マーキングというと、ありがちなのが、①講師が「はーい、②ここ重要だよーマーキングしてねー」と言い、これに追従して生徒がマーキングする、というやつです。

 この手の講座は予備校にもたくさんあり、また、司法試験に限らずこういった指導手法はごまんとあります。従って、なかなか否定し辛いのですが、私としてはこのようなマーキングは司法試験にとっては二重の意味でマイナスとなる可能性があるので、やるべきでは無いと思います。毒舌全開でいうと、これって中学生の勉強方法だよね、と思います。

①何が重要かを考えなくなる

 まず、マーキング部分を誰かに指示される、というのが最悪です。そもそも、基本書やテキストの著者の気持ちを代弁すれば、全て大切・重要な情報だからこそ記載しているのです。限られた頁数の中、取捨選択により切り捨てられた情報はごまんとあるわけです。筆者はマスコミ出身なので、この気持ちはよくわかります。

 いやいや、それでも情報が膨大すぎる、なんとか絞りたい、というニーズはよくわかります。現実的な悩みです。しかし、そうであるのなら、全てを読み、その中で何が重要な情報なのかを自分で考えて、抜き出していった方がはるかに良い勉強になると思います。司法試験に必要な問題発見力-読解力もつけることができます。

 そういった意味で、まとめノートを作成する気持ちでマーキングしていくべきだと思います。

②マーキングすべき箇所がおかしい

 次に、「重要な部分をマーキングする」という考え方自体もおかしいと思います。まず、何をもって「重要」とするんですかね。単に出題可能性の高低のことを言っているのであれば、ちゃんとAランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランクの5段階くらいで評価して、色分けもして欲しいもんです。

 上記のように、基本書に載っている内容はそもそも重要です。従って、基準を明確にしてマーキングしていかないと、「あっ!ここも先生に聞かれたけど、知らない情報だった!しまった!(マーキング)」といったことが繰り返され、結果的にほとんどがマーキングで塗りつぶされた謎の本が一冊出来上がります。

 散々ディスっていますが、筆者も法科大学院に入学した1年前期で、このような「犠牲者的な基本書」を数冊製作してしまいました。主に内田先生の民法I 第4版: 総則・物権総論ですね…。内田先生、すみません。

 従って、マーキングの際には、(アウトプットに役立つような)明確な基準が必要となります。

アウトプットのためのマーキング

 というわけで、司法試験に役立つ(可能性がある)マーキングとなるためには、①自分で②基準を明確にしておくことが要件となります。参考までに、筆者のマーキング手法をご紹介します。ただし、このマーキング手法は、

  1. 誰の意見も聞かず、完全に独自の考え方で編み出したため、
  2. 私以外の(ほぼ)誰もその手法を採用しておらず
  3. よって、結果のフィードバックも私以外は無いため、そもそも「だいたい」「正しそう」かどうかも全くわからない

というものです。私自身は、世界最高のマーキング手法である、と自負しているのですが、客観的には非常に不安が募るマーキング手法です。

解釈(規範)-理由マーキング

答案に書く形で頭に入れる

 私のマーキング手法の骨格となるのが、A.解釈-理由マーキングです。まず、解釈や適用に全く争いの無い条文・要件は、試験に出ません。面白くないからです。出たとしても、単なる要件あてはめだけですから、その部分の配点は低いものとなります。

 従って、解釈(と、それによって導き出される規範)は最重要マーキング項目です。私は規範を黄色でマーキングしていました。

 次に、なぜそのような解釈、規範に到達したか、という理由付けも最重要です。ここが、アウトプットへの意識をつける部分です。すなわち、全ての答案は(結局のところ)、「○○と解する。なぜなら、××だからである。」という結論-理由、又は理由-結論という構文にならざるを得ないため、理由付けのない規範は書けない=覚える意味が(原則として)無いからです。また、判例規範の射程が問われた場合(≒難問)、理由付けをきちんとわかっていなければ対応不可能です。あ、平成30年の民法、物権的請求権の相手方に関する論点はそんな感じでしたね。私は理由を水色でマーキングしていました。

※2019年7月3日追記 理由付けの重要さについては、下記関連記事もご覧ください。

 このように、基本書の記載の中から、解釈に争いがあるなかで定立された規範、及びその理由付け、という答案で絶対に書く要素を、自分で見つけ出し、抽出する、ということが非常に重要です。

 すなわち、常に「何を書くか?どう書くか?」ということを意識しまくりながら基本書を読んでいき、答案に書く形で頭に入れていく、というわけです。色分けすることで、規範と理由が別物だがセットとして頭に収納されます。

まとめノートとの対比

 このような作業は、まとめノートの作成とほぼ一緒です。完璧主義の方、時間に余裕がある方は、まとめノートを作成するのも良いと思います。実際に筆者も、行政法・刑訴法・知財法等は、ほぼまとめノートと呼べるものを作成していました。しかし、民法・刑法等は範囲も膨大で、まとめノートを作っているうちに本試験が到来してしまいます。また、近時の基本書はアウトプットを意識しており、解説の文体も、短文かつ論理構造が明確で、答案向きです。従って、基本書をマーキングすることで「まとめノート化していく」ということにも、十分合理性があるのではないかと思います。

 裏からみると、(自分にとって)まとめノートにしてしまいやすい基本書を選ぶことは、非常に重要です。だからこそ、私のブログの書評では「文体の書きやすさ」という評価項目を設けています。

その他のマーキング

反対説、有力説マーキング

 上記の規範理由マーキングは、最高裁判例、又は通説をマーキングするものです。受験指導業界では百家争鳴かとは思いますが、私は、反対説・有力説を学ぶことは有意義だと考えています。このことはまた記事にします。従って、B.「使う可能性大アリの有力説」は、規範を緑色理由をオレンジ色でマーキングし、C.「近時出てきた有力説」など一応注目すべき見解は、紫色でマーキングしていました。Cが結論と理由に分解されていないのは、答案に書く可能性がほとんど無いからです。

暗記マーキング

 これは、昔懐かしの「重要」マーキングです。すなわち、D.絶対に忘れてはならない条文や定義そのもの、または争いの無い、確定した解釈は赤色でマーキングしていました。要するに、理由の記載が必要ないが、絶対に書けなければならない、というものです。訴訟物の定義、とかですね。これを最小限に留めることが、勉強のコツです。

事実マーキング

 これは、当てはめが問題となる裁判例-刑訴法の捜査比例の原則とかですかね-が基本書で詳細に説明されている際に、E.裁判所が拾った事実のうち重要そうなものと、その評価を、青色の細ペンでアンダーラインを引くというものです。これも、「かっこよくあてはめるにはどーするか」というアウトプットを意識しながらするマーキングです。

具体例とまとめ

 以上のマーキングを、刑事訴訟法 第2版 (LEGAL QUEST)(94頁)で実際にやってみます。私は同書の旧版を完全完璧にマーキングしたのですが、新版はまっさらだったので、うってつけだったからです。論点は、別件逮捕・勾留です。

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 写真では(撮影環境も悪いので)水色と緑色の違いがわかりづらいですが、人間の目はもっと優秀なので、実物ははっきりとわかります。また、左上の一部は、間違えて引きすぎたので消しました。こういうことができるのも、フリクションの良い所ですよね。一応、学説的通説の本件基準説を黄色、別件基準説を緑色にしました。もっとも私自身の見解は紫色の川出説です。たまたま赤色ペンの出番は無かったですね。

 D.赤色ペンやE.青色細ペンの引き方、その他、基本書に(まとめノートとして)書き込んでいく内容については、また記事にしたいと思います。