※2020年2月28日 ご質問をうけて改訂しました
司法試験合格に必要な勉強時間
最近、働きながら司法試験を目指されている方のご相談を受けました。「1週間に演習問題で言えば10問くらいジックリ検討できる時間を作らないと厳しいですよ!それがムリなら会社辞めちゃいましょう!」と、ザックリとしたアドバイスをした後、う~ん。あれ?自分はどれくらい勉強したかなぁと思い、検証してみました。
伊藤塾さんのホームページによれば、1週間で20時間の勉強時間を確保できれば、「仕事を辞めずに」「3年間で司法試験合格」が可能です。とのことです。可能です。なら良いのですが、「十分に可能」とも書いてあります。マジか!?とりあえず、20*4*12*3=2880時間あれば、伊藤塾は合格可能と踏んでいるようです。
私はどれくらい勉強していたのか、学習記録を参照します。
私は「時間」で学習を管理していたのではなく、「やった量ー実績」で管理していたので、そのデータから時間を逆算してみます。①短答は一肢1.5分かけて、基本書での復習も兼ねてじっくりやっていた、②演習問題も、約90分はかけてじっくり復習していた、③基本書は、1頁2分はかけて、判例集も参照しながら読んでいた、④大学院の講義は、1コマ90分+200分くらいの予習… としてみて計算すると、
①肢別を解いた時間 757時間
②演習問題を解いた時間 2085時間
③基本書を読んだ時間 1461時間
④学校の講義関係の時間 1406時間 計 5709時間!
お~い。約2倍じゃないか。しかも、さらに残念なことに、私の主観では、週に12時間*6日は確実に勉強していたので、そーすると、本来は10368時間!勉強していたはずなのです。残り5000時間はどこに消えたんだ。
多分、5000時間くらいは必要
確かに、伊藤塾さんもホームページで指摘しているように、社会人として仕事で培われた力(主に、目標必達に向けた気合)が司法試験の受験勉強で大きなアドバンテージになるのは私も同感です。
が、しかしですよ。「2880時間の学習で司法試験に受かる社会人」は、非常に要領が良く、気合も十分なため、所属/経営する会社でも既に大活躍されているに違いありません(序論の相談者もそういう方です)。そんな人が、朝9時出社、夜19時退社、それ以外の時間は会社から一本の電話もかかってこない、という生活が送れるのだろうか…。という疑問があります。会社も、よっぽどのことが無ければリリースしてくれないんじゃないですかね。
私の5709時間分の学習は、司法試験にとってまさに価値がある!と感じたから記録していたわけなので、やはり、最低でも5000時間の勉強時間は必要だと思います。安全確実に受かりたいなら、本来なら10000時間くらいは確保したいところです。
経済事情というファクター
簡単な試算
もっとも、年収(例えば)500万円を維持しながら伊藤塾に通う(合計200万円くらいかかるんでしょうか?)とすると、3年間で1300万円の黒字。ということになりますが、ロースクールに行ってしまうと単純に3年間で240万円くらいの授業料+書籍代30万円=270万円くらいの赤字です。この差は大きい。
ですが、私の場合で言うと、半額免除を頂いていたので、授業料は120万円。書籍代がめちゃ多めで80万円として、合計200万円くらいがコストでした。一方で、自宅で週に2回学習塾を開くことによる収入が年間100万円。日本育英会の奨学金が年間約100万円で、これも全額を返還免除して頂きました。そうすると、仮に単身者なら600万円-200万円で、400万円の黒字です。なお、私の場合は奥さんと子供がいたので、こうは上手く行きませんでしたが。
授業料&奨学金の免除
という訳で、授業料や奨学金を免除してもらうことが非常におススメです。成績上位20%くらいには入っておかないと、このような優待は受けられませんが、短期間で司法試験に合格しようと思うのであれば、どっちみちそれ位の努力はしなくてはなりません。が、読者のキンさんから切実なご意見がありました。
何とか成績優秀者枠で入学し、それなりの努力の結果、GPA的には免除を得られるレベルを維持できていると思うのですが、大きな問題が発生しました。それは、授業料免除対象者の発表が、年度をまたいだ5月であったことです。
研究科長の教授や事務に相談したのですが、決定機関が学部外であるため、年度内には何もコメントできないとのことでした。
…そうなんですよ。勉強を継続するかどうかは3月中に決めなければなりませんが、授業料免除の通知が来るのは5月、奨学金免除の決定も卒業(修了)後、というディレンマがあります。
私の場合は、大学院事務室に足しげく通い(笑)
- 過年度実績(3年前のGPA○○の人が免除、2年前はGPA○○、1年前は…)のリサーチ
- 本年度の申請状況につきリサーチ(枠が○名で、○人が申請中。倍率1.5倍、など)
した上で、家族には「90%以上確実である!」と謎のプレゼンをしていました。審査権原が外部であり、かつ裁量がある以上「絶対に免除してもらえる」という内定は戴けない訳で、家族の納得はこのような方法によるしかないように思います。
もっとも、行政機関の裁量基準には信頼保護原則・平等原則からの拘束力が働きますので(笑)、よっぽどのことが無い限り、前例を踏襲すると思います。
なお、奨学金の免除も話は同じで(しかもこちらは額が大きい)、ハラハラドキドキします。こちらは、有力な教授の先生に(笑)推薦文を書いていただくことをおススメします。私は、刑法の教授に「感涙無くして読めない」級の推薦文を書いていただき、今も家宝として大切に保存しています。司法試験の合格証書よりも嬉しかったですね。
働きながら司法試験を目指すには
閑話休題。このように考えてみますと、①2880時間+伊藤塾+会社との調整に成功→で受かる可能性と、②10000時間+ロースクール→で受かる可能性を天秤にかけて、②>①だとした場合、③その「可能性の大きさ」に約1000万円の(逸失利益という)コストを投下できるか、という判断になります。
ちなみに、2880時間+伊藤塾で合格できる方は、ロースクールでも授業料免除、奨学金免除は簡単に勝ち取ることができると思います。
まず、①と②の合格可能性の大小関係ですが、司法試験合格者100人に聞けば、90人くらいは(程度の大小はあれ)②の方が大きいと言うんじゃないでしょうかね。こればっかりはアンケートなどの主観でしか検証しようがありません。
次に、③は完全に個人的な判断です。私個人としては、ロースクールの皆さん(ほとんどの教員、一部の学生)は優秀な方が多く、研究内容も先端的で、知らずに一生終わるのは残念だったな、というものが多かったので1000万円の価値はまああるかな、と思います。(下の写真は、ロースクールのプログラムの一環として、カンボジアに法整備支援のため派遣されたときのものです)。
ごく一部の社会人受験生のみに向けた投稿でした。
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