だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

憲法学読本〔第3版〕

憲法学読本 第3版

憲法学読本 第3版

 

・説明が わかり辛い ★★★☆☆ わかり易い

・内容が 意識高い ★★★☆☆ 基本的 

・範囲が 深掘り的 ★★★★☆ 網羅的

・文章が 書きづらい ★★★★☆ 論証向き

・司法試験お役立ち度 ★★★★☆

・ひとことで言うと「薄くても司法試験には十分」

憲法といえば芦部?

「表現の自由」(憲法21条1項)といっても、政治的表現、選挙運動、性的表現、名誉毀損の違法性阻却、近時の判例ではヘイトスピーチから、風俗案内所の立地規制まで・・・と、条文のカバー範囲が広すぎるのが憲法。一貫した理論・体系で論証をコントロールするのは至難の技です(それを頑張るのが学説ですが)。そこで、学習方法としては、基本的な考え方(基礎理論)を薄めの基本書の(複数回)通読で身につけ、あとはこんこんと判例にあたって、判例の「相場観」を脳に染み込ませるのが大切かと思います。
 というわけで、私は、憲法の基本書は必ずしも「芦部」から入る必要は無いのではないかと思っています。自分は2回通読しましたが。薄めの基本書の有力候補は、ストゥディアシリーズの憲法日評ベーシックシリーズの憲法、そしてこの憲法学読本だと思います。

憲法学読本の内容

憲法の基本書につきものの、①伝統説(芦部説≒アメリカの審査基準論)、②判例の考え方だけでなく、③三段階審査(ドイツの議論)、④近時の有力な理論(段階理論、制度後退禁止原則から、果ては長谷部先生のライフセーバー論まで!)までをフォローしています。にも関わらず統治を含めて350頁!!驚異的な薄さです。各論点・理論のチョイスも的確で、平成29年司法試験の「リプロダクションの自由」、平成30年司法試験の「青少年保護に付随する成人の権利制限」なんかも、きっちり載っています。また、後述の通り、文章も秀逸で、読みやすく、論証もしやすいものです。
 この様に、良いところづくめの基本書なのですが、ウィークポイントは、やはり「てんこ盛り」の弊害で、個々の論点・理論の説明は非常に簡潔な、いわゆる「行間を読む」系の基本書(リーガルクエスト「会社法」等と同様)なので、懇切丁寧な説明を求める方には向いていないかもしれません。また、できれば「首尾一貫性審査」なども項目立てて解説して欲しかったなぁという気がします。

憲法学読本の用途

インプット用としては、初学者、ローの方、上位合格を狙う方まで、幅広くオススメできる基本書だと思います。個人的には、基本書は「憲法学読本」、判例集代わりに「憲法判例の射程」、演習書は「判例から考える憲法」、この3冊をぐるぐる回していれば、司法試験の憲法は確実に合格点をとれると思います。

 また、文章が簡潔で論理的なので(特に宍戸先生、巻先生執筆部分)アウトプット用(論証の参考用)にも使えるかと思います。例えば、「営利広告」で言いますと、

①購買者獲得のための広告は誇大虚偽に流れやすい
②商品の効用といった広告内容は、真偽の判定が容易である
③営利を誘引とすることから、萎縮効果が働かない
∴厳格な審査基準は妥当しない(以上、同書143頁を要約)

といった記載になっています。理由と結論(規範)がきっちり分かれていて書きやすい!私は、理由付け②③を愛用していました。
 ほとんど良いところしか無いこの本、憲法がどうしても苦手だ~という方は、是非本書か、又は上述の有力候補を立ち読みしてみて下さい。

※私が愛読したのは本書第2でしたが、その後第3版に改訂されました。