たすまるです、こんにちは。皆さん、引き続き、自宅で勉強を頑張って下さい。今ほど引きこもりが奨励される時代も無いでしょう。
さて、本日は、読者のPoirotさん(読者の皆さんの読みやすさのために注釈しますと、これはフランスの人名-ポワレ、です)のご質問に答えて、①「法学部1年生(1回生)が買うべき本」について考えたいと思います。
その他の宿題としては、 下記のような記事があるでしょうか。頑張ります。
- ②読者の皆さんから送られてきた答案例を公開添削して、具体的な書き方について検討してみる。条文の適示とか。
- ③原告適格の記事の第2弾。あてはめ方、具体的な書き方ですね。
- ④去年もやったぜ、重判ランク付け!など最近の本の書評(良い本いっぱい出てますね)
Zoom勉強会
また、緊急事態宣言が延長しそう、ということで、受験生支援の一環として(なんだか偉そう)自宅からZoomで
- ⑤1日(くらい)ぶっ続けで勉強してみよう!
という企画をやってみます。一日Zoomを繋ぎっぱなしにして(筆者はライセンス取得済み)、午前中(というか適当な時間帯)は「会社法・基礎編」または「会社法・応用編」のオンライン・ソクラテス・メソッド!(略してOSMと言ってみよう)をやります。午後はそのまま各自黙々と自学自習を続け、わからないところや学習法の疑問などがあったらその都度、たすまるに質問したりする、というものです。
謎の企画ですが、とりあえず下記要領でやってみます。
- 開催日
5月9日(土)、10日(日)、16日(土)、17日(日)、のいずれか1日(要望が最も多かった日に決定)、多分朝9時くらいスタート - 申し込み方法
お問い合わせフォーム から、①お名前(Zoom参加するときのニックネーム)、②メールアドレス(これがないとZoomに招待できない)、③一応の属性(独学、予備校生、学部生、ロー生など)、④希望日(優先順位にしてもOK)を記入して送信する - 参加方法
ボチボチ参加者が集まっていれば(目安10名以上)、筆者から招待メールが送られてくるので、好きなタイミングでぽちっと押して参加。※Zoomへの参加は、PCかスマホがあれば誰でも可能です。
ボチボチ参加者が集まっていなければ、自動流会(ブログで最低限のお知らせはするかもです)。
法学部1年生が買うべき本
さて、あらためまして、Poirotさんのご質問の内容です。
はじめまして。いつも記事を楽しく読ませていただいています。私は今年の春から某私立大学法学部の1年生になったものです。(中略)そこで少々どうするべきなのか分かりかねていることがあります。使う教材のことです。
私の家は決して裕福な家庭ではないので、多くの教材を買うことはできません。従いまして、学校の教科書とそれを補填する司法試験対策の問題集、参考書等で勉強をすることが(Poirotさん、「を」です)強いられます。
そこでですが、大学一年生がまず司法試験対策として使うべき参考書、問題集はどれだと思われますか?ちなみに教科書は憲法が「憲法第七版(芦部信喜)」、刑法が「講義刑法学・総論(井田良)」民法が「民法Ⅰ総則(佐久間毅,石田剛,山下純司,原田昌和)」、「民法演習サブノート210問」、「民法判例30!総則」というものです。あと、判例六法、ポケット六法も購入しています。
(中略)付け足してお聞きしたいのですが、私の大学では1年生は、憲法と刑法と民法しか触れません。正直司法試験を目指すのであれば、足りないと思うので、ほかの科目の勉強もしたいと考えています。その場合2年次、3年次、4年次で使用する教科書も購入すべきでしょうか?とても悩んでいます。
なるほど!司法試験&法曹という夢をもって法学部に入学してきた1年生は、こーゆー悩みを持つものなのですね。筆者は非法学部のオッサンとして法科大学院に入学したので、よく分かっていなかったのです。以下、ご質問を分節しつつ、検討していきます。
1. 指定教科書を買うべきか?
まず、やる気に満ち溢れた法学部1年生であれば、「そもそも指定教科書って司法試験に役立つんだろうか?ほんとにこれ一冊で良いの?」的な疑問を持つと思います。至極ごもっともな疑問です。
これについては、まず結論を簡単に。
- 90%の人は、指定教科書を買いましょう。かなり困窮してる、または、10%の変り者を自認している人(筆者含む)は、買わない or 先輩からもらう、のでも良いでしょう。
- 予備校に通っている人は、追加の教材は(とりあえず)不要です。
- 予備校に通っていない人で、かつ、司法試験を真剣に目指している人は、下記、筆者のおススメする書籍を買ってみてください。
理由を敷衍します。
指定教科書は役に立つか
まず、指定教科書が、司法試験対策として有用かどうかについては玉石混交!、自分に合っているかどうかは千差万別です。正直言って、「役に立つかどうかよくわからん」という訳です。なお、Poirotさんの大学の指定教科書についての筆者の個人的感想は、
- 憲法第七版(芦部信喜)
→ 名著ですし、避けて通れない「いつかは読む一冊」ですが、ちょっと難しいのでは。ストゥディアか日評ベーシックにしておけば良かったのに。学部1年生で副読本(例えば、憲法論点教室)無しで理解できるとは思えないけど…。 - 講義刑法学・総論(井田良)
→ 筆者は大好きですし、司法試験にももちろん有用ですが、これまた難しすぎるのでは。1年生にはオーバースペック。 - 民法Ⅰ総則(佐久間毅,石田剛,山下純司,原田昌和)、民法演習サブノート210問、民法判例30!総則
→ ぬぉぉ なぜに佐久間先生の単著を使わずリークエなのか、一瞬理解に苦しみましたが、改正民法にフル対応しているからか。そりゃ教科書として妥当ですね。サブノートは実質一択か。民法判例30!は読んだことないのでわかりません。
… というものです。民法以外はちょっと難しい&格調高すぎる気が。
閑話休題。もとに戻って、役に立つかどうかよくわからん!くても指定教科書は買うべきです。と言いますのも、そもそも法学は難しいです。敷居高いです。一見さんお断り感もすごいです(下記記事の最後の方も参照)。
「え?そんなら難しい指定教科書は良くないじゃん」「なるべくわかりやすく、親しみやすいテキストが良いのでは?」はい、実際そうです。従って、後述の通り、様々な教材を追加で購入するのは良いことですし、そうすべきです。もっとも、だからといって指定教科書を買わなくて良い、ということにはなりません。
文字通りの「辞書」として
と言いますのも、法学の難しさ、敷居の高さを超える最速最良の方法が、法学クラスタの住人と仲良くなる、その思考方法を学ぶ、というものです。このブログでも散々言及してますが、英語が話せるようになりたければ、アメリカに1年住むべし、という感覚に非常に近いものがあります。
そして、法学クラスタの住人として、まず真っ先に仲良くならなければいけないーというより仲良くなった方がお得なのが、大学の教員の先生方です。「あの先生は単位厳しい」とか、「あの先生は司法試験とは全く関係無いことばっかり」とか、色々思うところはあるでしょう。しかし、法学部の教員の先生方は、まごうことなき法学クラスタの住人です。まずは、教員の先生方と話して、言っていることを理解しよう(読解力)、納得させられる論理を考えよう(思考力)、自分の考えを伝えよう(表現力)、と試行錯誤することがムダになるとは思えません。
指定教科書は、教員の先生方とコミュニケーションする際の辞書ー共通語となるものです。ある教科書を指定した教員は、徹底的にその教科書を読み込んでいます(当然だけど)。「先生、教科書〇〇頁の記載の意味がよくわからないのですが…」という質問に、喜んで、全力で答えてくれるはずです。その受け答えの中から、読解力、論理的思考力、表現力を盗み、学んでいく訳です。
アメリカ人と会話するときに「とっかかり」-共通語や共通知識が多ければ多いほど良いのと同じことで、指定教科書は(内容の良し悪しに関わらず)辞書として機能します。この辞書としての役割は侮れないので、まあ買っておいて損はない、と筆者は思う訳です。
2. 指定教科書で足りるか?
という訳で、指定教科書は原則として「買い」ですが、上記の通り、(Poirotさんの大学も含めて)司法試験に超役立つ!どストライク!な教科書ばかりでないことも確かです。そうしますと、指定教科書に「買い増す」ことが有力な選択肢となります。というか、買い増した方が良いでしょう。問題は、「何を目的として買い増すのか」ということです。これには、法学部(法科大学院)の指定教科書を補完する、という役割から、大きく言って2つの目的があるように思います。以下、おススメの書籍を紹介しつつ、検討します。
とにかく敷居を下げる(ディフェンス)
上記の通り、指定教科書は「法学」というNew World探検のための地図であり辞書なのですが、かなり難しいものが含まれている場合があります(上記のPoirotさんの例参照)。英語を学習する際に、初めに渡されるのが「新編英和活用大辞典」みたいなのを手渡されたら、(いくら名著でも)英語が嫌いになりかねません。
そんな訳で、法学全般、及び各教科ー特に憲法、民法、刑法の敷居を下げ、嫌いにならないための本を読んでおくことをおススメします。
法学全般
上記、故島田先生らの著書は難しい部分もありますが、最初の一冊して、「法学クラスタの(最先端の)人達って、こんなこと考えてるんだ~」というのを肌に感じるのに最適かと思います。
不朽の名著。上記「法解釈入門」はまさに法解釈ー論述、論証することを前提に置いた内容で司法試験向きでもありますが、こちら「現代法学入門」は「法とは何だろう」から始まるタイプの本で、むしろより初学者向きです。数十年前の本ですが、意外とよみやすいので、Amazonで旧版を爆安で買って読むことをおススメします。
憲法
長谷部先生の本は面白すぎるので、ハセベニアン?ハセベスト?どう言うのかわかりませんが、一時的に長谷部教信者になってしまうというリスクはあります(笑)。しかしながら、やはり「面白い」のは非常に重要です。
あとは、ストゥディアか日評ベーシックの「憲法」は是非とも買っておきましょう。損しません。
民法
近著ながら、不朽の名作。と筆者は思います。道垣内先生が猛烈にシャープかつ説明がわかり易いため、民法だけでなく法学全般の考え方を学ぶのにも役立ちます。
刑法
ひと昔前でしたらば、井田先生の
をおススメした(筆者も愛読)のですが、そのさらに上を行くのが、和田先生の
です。正直、初学者向けすぎて購入していないのですが、立ち読みしました。和田先生の主要な論文は結構読んだつもりですが、道垣内先生と同様、猛烈に頭良い&猛烈に分かりやすい説明、は両立するんだなぁ、という良い例です。住居侵入罪だったかな、井田先生に反論する論稿がとてつもなく面白かった記憶があります。
この際、行為無価値とか結果無価値とか、どーでも良いです。刑法を嫌いになることに比べたら100倍マシ。
書くことを意識する(オフェンス)
次に、「指定教科書が司法試験に役に立た~ん」となる原因のうち、結構大きいと思われるのが「書く=論述問題を解くことがあまり意識されていない」というものです。まあ、法学を学ぶ人の全員が、司法試験受験予定者って訳じゃないからね、しょうがない。という訳で、多少難しくとも、初学者の段階から、「書くこと(アウトプット)」を意識したテキストを読んでおくと、後々役立つでしょう。
上記「法解釈入門」や「どこでも刑法」は書くことが意識されている、という点においてもおススメ、つまり二重におススメです。その他の書籍としては、下記のようなものがあるでしょうか。
法学全般
色々な本がありますが、現状、「書く」ことの入門書として、最もバランスが良いのがこの本でしょうか。これまた買って損なし。というより、「法解釈入門」「リーガルベイシス民法入門」「法を学ぶ人の文章作法」あたりの本はかなり汎用性が高いと言えるため、これらの本がムダになってしまうようでしたらば、勉強法がやや特殊なのではないかと思います。山野目先生の部分を読むのが辛い人は読み飛ばしましょう。
憲法
民法
くどいですが、佐久間先生の論述は全ての司法試験受験生にとって見本というべきもので(※筆者個人の感想)、「民法の基礎」シリーズは、多少難しいですが、ぜひとも読んでおくべきだと思います。
刑法
これまたくどいのですが、橋爪先生の論述もぜひ参考にして下さい。これまた佐久間先生と同様、内容は高度ですが、「いかに難しい単語、概念を使わないか」「いかに一文を短くするか」「いかに一文をわかり易くするか」など、論述の進め方それ自体が勉強になるのです。
番外編
法律学にしろ、例えば筆者の専門(であった)映像にしろ、「理想像」を参照することは常に勉強になります。そういった意味で、(ほぼ絶対に)書けないけれど、こういうのが理想だね、という論述の最高峰?として、大島先生の本をおススメします。
3. 2年次以降の教科書も買うべきか?
これは各法学部(法科大学院)によって事情は異なると思います。1年次に憲法・民法・刑法などを学習し、2年次以降に行政法・訴訟法、3年次以降に演習や発展分野~と進むようなパターンが多いのでしょうか。
いずれにせよ、下記の考慮要素により、買う/買わないを決定すると良いと思います。
- まず(目の前の科目の)成績上位をとることが重要なので、格別焦って買う必要が無い、というのが原則
- 特に、知財法や会社法は、重要な法改正や判例が相次いで出される科目なので、焦って買うと、買いなおすことになることに留意
- 成績上位がとれる見込みがあれば、①勉強を先行させる、②全ての科目をある程度把握しておいた方が、目の前の科目の理解度も高まることがあるため、入門書を買うことはそれなりに有用
という感じでしょうか。第3テーゼにつき敷衍しておきますと、「森を見て木を見る」で、先に森を見ておくと、木の理解が深まる、ということです。筆者は成績上位がとれる見込みあり、というより必達目標であって、成績上位がとれなければ即退学という状況だった(下記記事も参照)ため、次年度以降の科目の書籍も購入していました。
筆者が「先行購入」して良かったな、と思う本や、先行購入しておけばよかったな、と思う本を下記に挙げておきます。おススメ順です。
- 民訴法の入門書を読んでおくと → 民法(要件事実論)の理解が深まうえに、 → 行政訴訟法の理解も深まる。一石二鳥。
筆者の受験生時代にはストゥディアがまだ出版されていなかっため、中野先生の入門書を読んだ。これまた名著で、おススメ。
- 行政訴訟法の入門書(特に訴訟選択について触れたもの)を読んでおくと → 憲法の理解が深まる。
-
商法の入門書を読んでおくと → 民法(特に法人関係や、表見法理等)の理解が深まる。
- 民事保全/執行法の入門書を読んでおくと → 民法(担保物権法)の理解が深まるうえに、 → 民事訴訟法の理解も当然深まる。これも一石二鳥。
まとめ
とまあ、大して内容が無い記事ですみません。要するに、①指定教科書は買う、②めちゃわかり易いテキストや、③書くことを意識させるテキストを買い増す、ということです。次の記事は「重判ランク」かなー…読む時間が(以下略)。