だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

答練の模試化ー客観的相対的評価

※2020年2月20日 改訂しました

 ご無沙汰している筆者たすまるです。やーコロナウイルスのおかげで、サプライチェーン大混乱ですね。
 最近、模試の成績や感想をアップされている記事を多々拝見しましたので、答練&模試(以下、面倒なので一括して答練と言ったりする)の活用方法の記事をリライトしたいと思います。やや出遅れた感ありのため、むしろ来年答練を受ける方向けの記事ですね。すみません。

 本記事は、もともと共同執筆者のありまるくんが書いたものなのですが、ありまるくん執筆部分を紫字として、大幅にリライトしました。なお、私ありまる&たすまるさんは、伊藤塾のペースメーカー論文答練(通称ペー論)しか受けたことがないので、下記の記事はその経験から得た情報だと思ってください。

予備校の答練の必要性

時間との闘い

 そもそも、答練を受ける必要があるのか。知識さえ知っていれば問題を解けるのではないのか。初学者の方で、そのような疑問を持つ方もいるかもしれません。そういう方は、出題された論点を一度確認した上で時間を測って司法試験の答案を書いてみてください。時間が足りないと感じたり、時間以外に気を使うべきことはたくさんあると気づけると思います。そのため、制限時間内に答案をまとめる訓練として答案作成はすべきだと思います。司法試験が時間との勝負でもあることは下記記事を参照してください。

 たすまるとしては、出題された論点を一切確認しないで過去問起案すべきと思います。本ブログでさんざん述べてきた通り、「問題発見」が最も難しいー読解力が身につくまでには時間がかかるーと考えているからです。

客観的評価の重要性

 答案作成自体は、予備校の講座をとらなくてもできます。そして、答案の書き方や知識が正確で、しっかり採点できる人が身近にいて、実際に自分の答案を採点し続けてくれるならば、答練は受けなくていいと思います。しかし、現実的な話ではないですよね。お互いに忙しい身でなかなか予定が合わなかったり、そもそも採点してくれる人が周りにいなかったりしますよね。そこで、じゃあ採点してくれる人を外注しようよってことで答練の存在意義が生まれてくると思います。

 たすまるが思うに、これこそが、答練の最大の存在意義です。下記記事の通り、論文式試験とそれに対応できる実力は、客観的評価が最も難しい類のものです。(それなりに長い)司法試験の勉強において最も気を使うべきポイントは、自分の実力の客観的把握にあると言って過言ではありません。

 上記記事でも述べましたが、ロースクールや予備校の最大の価値は、「教員や授業のクオリティ」「勉強せよという強制力」などではなく、「比較相手を見つけられること」「読み手を意識した論述ができるようになること」にある、というのが筆者の持論です。特に、ロースクールで都合6回(かな?)の定期試験で常に成績ー客観的評価を下してくれるのは大変ありがたいことな訳です。

 「客観的評価は良いとして、ローの定期試験や予備校の答練が本当に客観的な評価って言えるの?問題どうよ?採点どうよ?」的なことを宣う方も多々いらっしゃいますが、あまり気にする必要が無いことについては後述します。 

答練の問題について

論文問題

「ヘンな問題」問題

  答練の問題は予備校オリジナルで、いろいろな意見があるかと思いますが、ありまるの意見としては、基本的な論点とマイナー論点を塩梅よく織り交ぜてるなという印象を受けます。ただ、未知の論点(マイナー論点)を出題してくれるのはいいんですが、その採点をしっかりしてくれるのかといった難点は気になるところです。詳しくは後述します。

 たすまる的には、確かに配分としては、メジャー&マイナー論点をうまく散りばめてあると思うのですが、問題の傾向が司法試験とぜんぜん違う!と思ってました。何ていうんですかね、同じマイナー論点を出すにしても

  • 答練:こんなマイナー論点、知ってる?≒単なるクイズ
  • 司法試験:一見、メジャー論点に見えるでしょ?でも、ちょっと事案が違うから検討が必要ですよ→検討するとマイナー論点にたどりつく≒思考力テスト

という違いがあるような気がするんですよね。ですので、「こんな問題が出来たからって司法試験とは関係ねぇ!」と心の中で吠えてました。
 このような「ローの定期試験や答練・模試の問題ってどうよ?司法試験と傾向違うやないか問題」(以下こういう問題を、「ヘンな問題」と言ったりする)は、全ての受験生が一度は感じたことではないでしょうか。もっとも、たすまるとしては、問題の傾向が司法試験と違っても特にそのことが答練や模試を受けない理由にはならない、と思います。

相対評価の世界

 司法試験はもちろん、定期試験や答練・模試も相対試験です。「ヘンな問題」を受けるのは、受験者全員です。平等な土俵なのです。もちろん、些末な知識の有無で得点が上下することもあるでしょう。しかしながら、(筆者の完全に個人的な感想では)勝敗を分けるのは、「ヘンな問題にぶち当たったときの対応力」で、それは結局、読解力・論理的思考力・表現力という基礎体力の世界です。大げさに言えばヘンな問題であればあるほど地力が問われる、という側面もあるように思います。

 実際、身の回りの成績超優秀者に、定期試験や答練・模試の「ヘンな問題」の得点がどうだったか、聞いてみると良いと思います。大して得点を落としていない人が多いはずです。むしろ、「ヘンな問題」で大きく得点を落としてしまうのであれば、その成績優秀者は知識偏重ー暗記に頼った学習をしているおそれがあるように思います。

短答問題

 基本的には、本試験と同レベル程度の問題を出題しています。たまに難易度が下がったり高くなったりしますが、基本的問題と高難易度の問題を塩梅よく織り交ぜています。毎回平均点以上をとっていれば、本試験直前期にあせって短答ばかりやることにはならないと思います。短答の勉強と論文の勉強の配分をどうすべきか気になる方もいるかと思いますが、短答の現時点での地力を確認する場として、短答の答練はおススメです。定期的に短答の地力を確認しておくと、直前期に短答ばかりやらずにすむので、精神衛生上かなりいいと思います

 たすまるとしてもこれは同意で、短答問題の質は高く、ほとんど本番ととれる点数が変わらないんじゃないかな、と思います。まあ、過去問の焼き直しだから当たり前なんですけどね。

答練の採点について

「ヘンな採点」問題

  論文問題の採点に関しては、一言でいうならば玉石混交といったところでしょうか。例えば、未知の論点に関しては、予備校が用意した解答筋・キーワードでなければ点数がつかないこともあったり、それとは異なる解答でも基礎基本から理論を積み立てていることを評価してくれることがあったりします。そのため、理論的正確性の確認の場として答練を活用するのはあまりおススメしません。時間配分・人に伝わる文章力・各科目独自の書き方を確認する場として答練を活用するのがいいと思います。

 さて、客観的評価を得ることを目指す受験生にとって、「ヘンな問題」以上に問題なのが、「ヘンな採点」です。確かに、答練・模試の採点は、直ちに承服し難い気分にさせるものがあります。たすまる的には、玉3割、石7割の玉石混交です。また毒舌炸裂ですが。確かに合格者が採点しているんでしょうが、①合格者にもレベルの高低がありますし、それよりも重要な問題として、②そもそも合格者が良い採点・添削ができるとは限らないように思います。

 たすまるは、法学部生の定期試験的なものの採点をしたことがあるのですが、これは非常に難しい作業です。本来ならば、採点者はそもそも配点表の作成に関わるべきで、そうして初めて正確な採点ができるように思います。「配点表を渡されて採点する」と、配点の裏に隠された出題意図ーなぜ、この言及にこの点数が振られているかーが理解できないため、「機械的すぎる採点」となってしまうのではないでしょうか。

これまた相対評価

 しかし、「ヘンな問題」と同様に、「ヘンな採点」の洗礼も、受験生全員が平等に受ける(食らう…)ものです。という訳で、ヘンな採点のせいで大きく優劣が動くことはありませんし、得点の上下に一喜一憂する必要もありません。

相対評価ができない!?

 ただし!相対評価ですから、(採点者が酷いことによる絶対的得点の上下ではなく)相対的な順位や偏差値に一喜一憂しなければなりません。これができないのであれば、答練を受ける意味は半減どころか70%減です。そうすると、ここで大問題が勃発します。

  • 模試は、順位や偏差値など相対評価がビシッとでるが
  • 答練は、点数だけで順位や偏差値がでない or 順位が出るとしても、答練は郵送方式でも参加できるため、「多少時間オーバーで書いた人」や「論証集見ながら書いた人」も含まれてしまうため、相対評価の信頼性が落ちる

 というものです。うーむ、由々しき問題です。特に、たすまるが受けていた伊藤塾のペー論は、超上位者じゃないと順位出ないよ~というものだったので、自分の立ち位置がサッパリわからない訳です。こりゃーいかん。常に客観的評価のため、相対化しなければ!というのがたすまるの問題意識でした。

答練の模試化

 という訳で、たすまるは、ローの同期9人(もちろんありまる君含む)と、「答練を模試化するゼミ」を組んでいました。どういうものかと言いますと、

  1. 朝一で、ローに集合。大き目の教室を借りて、模試会場っぽくする。
  2. 9時など、時間を決めて一斉に解き始める。11時になったら終了!時間厳守。そのまま送付用封筒に厳封。
  3. 後日、採点&添削で返却されたら、後述の成績表に記入し、全国偏差値(推計値)を算出。順位&偏差値で競い合う。
  4. また、平均偏差値をレーダーチャート化して、自己分析する。

 というものです。1~2は、本番同様のガチさで答練を受けることで、なるべく正確な成績を出そうという涙ぐましい努力ですね。2時間起案に慣れることももちろんです。これはやっている受験生も多いのではないでしょうか。

 3~4が、客観的評価を正確なものとするため、答練を模試化する、という工夫です。ご存知の通り、偏差値なるものは、

  • 偏差値=(得点-平均点) ÷ 標準偏差 × 10 + 50

という式で(だいたい)出ます。そして、自分の得点と平均点は予備校が教えてくれます。あとは、そこそこ信頼できる標準偏差があれば良い!そして、EXCELには得点から標準偏差を算出するSTDEVPという関数がありますから、ちょちょいのちょいで、順位・偏差値つき成績表の完成です。

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 (ぼかしてあるところに人名が入ってます)こんな具合に、毎回の答練における自分の順位・偏差値、全答練で平均した偏差値のレーダーチャートが一目瞭然です。ううむ素晴らしい。自画自賛。母数9名ですから、標準偏差の正確性にはやや難ありです。そこが不安だったので、ローでの平均点も随時計算し、全国平均点と比較していましたが、大きくずれなかったため、まあ標準偏差もそこそこ信頼性はあるのでしょう。

 上から二番目のレーダーチャートは筆者なのですが、憲法が50,民法と行政法が70,その他科目が全て60程度という平均偏差値だったのがわかります。憲法は、問題はそこそこ良かったのですが、採点があまりにヘンだったので、やや本番(下記記事参照)とずれましたが、他は概ね答練偏差値のような成績となったように思います。

 何度も強調している通り、答練・模試の最大の効用は「客観的評価」にあります。ぜひ、このような「答練の模試化」に取り組んでみて下さい。 

結びに代えて

  答練の点数が悪くても腐らずに前を向いて勉強するしかありません。一度目の受験時代はインプットすら不十分だった状態で答練を受けていたので、結構大変でした。やはり上記の答練を活用する意義を踏まえますと、答練を実のあるものにするには、インプットは終えた状態で臨むことが大事だと思います。当然と思われるかもしれませんが、念押しのつもりでここに記しておきます。この記事が少しでも参考になれば幸いです。

 そうそう、そうですね。この辺は、「過去問を回す」というのと同じです。インプット十分の状態でやらないと、答案練習は意味がありません。まあ、「十分」かどうかは主観的な判断となりがちですが…。目安としては、過去問にしろ、答練にしろ、「内容的に知らない論点」が50%以上あったら、マズいので、答練やってる場合ではないと思います。過去記事もご参照下さい。