だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

ロジカル演習 民事訴訟法と、論理的表現力


ロジカル演習 民事訴訟法

ロジカル演習 民事訴訟法

 

・説明が わかり辛い ★★★★☆ わかり易い

・内容が 意識高い ★★★☆☆ 基本的 

・範囲が 深掘り的 ★★★★☆ 網羅的

・文章が 書きづらい ★★★☆☆ 論証向き

・司法試験お役立ち度 ★★★☆☆

・ひとことで言うと「民訴答案の論理展開を知る」

論理的に表現するには

 ブログを始めて約半年たちましたが、「これまでの受験勉強」という遺産を出していくだけでは申し訳ないと思い、最新刊を買ってみました!司法試験考査委員だった越山先生の門外不出のレシピを答案化したものーと言えば、受験生は少なくとも立ち読みしないわけにはいきません。というわけで、人柱的に筆者が購入し、急ぎ読了した次第です。

 さて、本書は「ロジカル(論理的な)演習」と銘打っています。筆者も、司法試験には、読解力、記憶力、表現力のみならず、以上の前提となる論理的思考力の4つが必要と考えています。この点については、下記記事もご参照下さい。 

論理的表現力の3つの内容

 つまるところ、前提となる論理的思考の結果を吐き出す表現力ー名付けて論理的表現力が必要となるわけですが、これはさらに3つの内容に分かれると思います。すなわち、①一文、または一つの論証といった短いパッセージが論理的であること、②論証と論証の組み合わせー展開が論理的であること、③論証と論証の理論的な整合性、です。

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 こんな感じですかね。さて、「答案が論理的じゃないよね」という話題になるときに、そこで想定されているのは③理論的整合性のことが多いような気がします。刑法総論や手形法、そして民訴法などでは特に問題になりますかね。

 しかし!筆者としては、法律がどうも苦手だ、答案が上手に書けない、という人の大部分は、むしろ①②に問題を抱えている人が多いように思います。というか、答案も文章である以上当然ですが、これらの表現力の優先順位は、①>②>③です。①論理的文章力がなければ、文章の意味が伝わりません。②論理展開力がなければ、文章と文章がつながらず、これまた意味が伝わりません。

①論理的文章力

 まず、①は国語ー日本語の問題なので、基本的には自助努力で解決するしかありません。これについては、こちらの記事もご覧ください。

 ③理論的整合性

 そして、③はじっくり基本書をよむ、基本書をコロコロと変えない、ということに尽きますね。民訴法で言えば、

民事訴訟法 第3版 (LEGAL QUEST)

民事訴訟法 第3版 (LEGAL QUEST)

  • 作者: 三木浩一,笠井正俊,垣内秀介,菱田雄郷
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  は、いずれも良書ですが、理論(体系)が全く異なるので、つまみ食いは厳禁です。もちろん、理解を深める「参考書」として読むのは、非常に良いことです。理論的整合性は、そう簡単には判断できない難しい要素ですので、また別の機会に記事にします。というより、上記の通り、①②が先決問題です。

ロジカル演習 民事訴訟法の内容

民訴法は論理展開力が重要

 本書のはしがきによると、本書の目標は「民事訴訟法の重要な論点について、A.論理的に正しい順序で考えることができる力を高め、B.正しい順序で検討した結果を答案上で説得的に展開できる力を確立することにあります。」ということです(アルファベットは筆者の挿入)。すなわち、上記の論理的表現力の3つの内容のうち、ズバリ②ー論理展開力を鍛えよう、というコンセプトの演習書です。そもそもタイトルも「ロジカル演習」ですしね。

 民訴法の特色として、条文が抽象的で分かりづらかったり、弁論主義のように、そのものズバリの条文はありません!ということがあります。要するに、事実と条文(や原理)の距離が遠いってことです。多くの受験生は、「既判力の客体的作用の問題とはわかるんだけど、何から書き始めればいいのやら…」と悩んだ経験があると思います。これも、民訴114条1項が「主文に包含するものに限り、既判力を有する」としか書いていないことに起因します。

 いつ、誰に、何が、どのように及ぶんだよ!ということが不明確なので、民訴の答案は、これらの要素を「正しい順序で」「展開」していかなければなりません。この、論理展開の難しさが民訴=眠い、難しいの根源です。ここに着目した本書のコンセプトは素晴らしいと思います。

本書の特徴

問題が司法試験っぽい

 本書は、1.事例問題→(参考判例)→2.解説を読む前に、というチェックポイント、3.解説→4.答案例→(参考文献)という構成となっています。まず、事例問題ですが、さすが司法試験考査委員の先生!でして、かなり司法試験に近い、長文の問題となっています。特に、会話型の問題が多いのが嬉しいですね。問題のレベルは、司法試験よりはやや簡単といったところでしょうか。たまに、かなり難しい問題も出てきますが。網羅性は、Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕ほどではないものの、十分かと思います。

アドバイスが充実

 基本書や演習書の内容として、学習上、答案作成上のアドバイスを載せることが流行?しています。本書も、2.解説を読む前に、のところで「こういう答案は論理破綻してるよ」「こういう答案は感じ悪いよ」というのを直截に教えてくれます。採点実感ですね。正直言って、これらの「目からウロコがあああ」というよりは、「うん。知ってる」というものが多いのですが、これは、筆者の法科大学院の教授もアドバイスが上手だったからだと思います。

解説がQ&A方式

 次に、解説の方式はなかなか独特です。「この順番で論理展開しないとまずいよ」ということを実感してもらうために、細かいQが順番に出てきて、それに対するAを積み重ねていくと、正しい論理展開になるよ、という仕組みです。要するに、ソクラテス・メソッドを紙面で再現していくわけです。実際に読んでもらえばわかるのですが、例えば上記の「既判力の客体的範囲ー基準時後の形成権の行使」の論点で言いますと、

Q1. 前後両請求の訴訟物を比較しなさい
A1. 訴訟物は違うけど、先決関係だから及ぶね
Q2. 既判力の作用は?
A2. 積極的作用→消極的作用で、主張立証の制限が出てくるね
Q3. 基準時後の形成権の行使を許容する論理は?
Q4. 基準時後の形成権の行使を否定する論理は?
Q5. 判例の理由付けは?
Q6. 具体的な検討 (以上、本書128頁以下より要約して引用)

となっています。めちゃくちゃ丁寧な論理展開ですね。解説(A)自体も(文章は)非常にわかりやすいです。が、上記Q&Aを見てもわかるとおり、細かい問題意識も全部拾っていこうとするものなので、それぞれの解説は結構コンパクトです。例えば、上記の論点で言えば、「付着(内在)瑕疵論」は一応知ってるよね、という前提となっているように読めます。つまり、良い解説なのですが、初学者向きというよりは、基礎~中級レベル向きとなっています。

答案例は結構独特

 と、ここまでをまとめると、問題よし、アドバイスよし、解説よし、ですから激推し!となりそうですが、私が唯一しっくりこなかったのは答案例です。

 原因の1つ目は、細かい問題意識を全部拾っていくスタイルーウルトラA答案ーなので、ごく単純に「こりゃ理想だけど、量的にも質的にも現実的に書けません」という問題が発生します。また、細かい問題意識を全部拾っていくので、結果的に論理展開も少し見えづらくなります。

 原因の2つ目は、筆者のボンクラ感性からすると、越山先生の文章(①のレベルー論理的文章力、という意味での文章)があまり好きではなかったー という完全に主観的なものです。高橋先生の文章が大好きだったのと対照的です。筆者には書きづらい文章だったんですね。一文が長く感じてしまいましたし、法的三段論法の方法もあまり馴染めませんでした。もっとも、こればっかり(文章の書きやすさ)は相性問題ですので、バッチリはまる方もたくさんいらっしゃると思います。

ロジカル演習 民事訴訟法の使い方

 と、いうわけで、本書のメインターゲットは、「基本的な知識はインプットしたし、論証も一応覚えた→が、具体的にどうやって論理展開するのかがいまいち身についていない」という方です(多そう)。とにかく民訴は②論理展開力が重要なので、ここを鍛えるのは不可欠です。

 もっとも、法科大学院のソクラテス・メソッドでビシビシ論理展開を鍛えられていたり、採点実感でボロボロに言われた経験のある人であれば、それで十分足りているのではないかと思います。あくまで、再確認ですね。そのような環境に無い方にとっては、かなりパフォーマンスを発揮する書籍かと思います。

 また、答案例も、越山先生の感覚と合致すれば、これ以上ない武器になると思います。なんといっても、司法試験考査委員経験者の先生の答案例ですので。そういった意味では、上位合格を目指す受験生が「越山先生はどう表現するのかな~」と、論パ作成の参考書代わりに使用する、という用途もあるかと思います。

 いずれにしましても、論理展開力にスポットを当てた、という本書のコンセプトは面白く、秀逸ですので、一読の価値はあるのではないでしょうか。