だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

知的財産法の基本書・判例集・演習書リスト

※2020年12月8日 年の瀬ですが、改訂して2020年版にしました

 各教科のオススメ教材リストの第7弾、知的財産法です。知財法は、とっかかり≒クレームだとか、著作物性だとかの基礎概念自体がとっつきにくい、というのが特徴でしょうか。

 そこさえ乗り切ってしまえば、知的財産法は理論的にも、利益衡量的にも大変楽しい法律です。また、要するに特許法は行政法+物権法で、著作権法は不法行為法の特則ですから、相乗効果も期待できます。利得の吐き出し、など。また、田村先生を始め、実務家視点をもった先生が多いことも特徴で、主張立証責任の分配、既判力など民訴法にも強くなります。

 うーん、またしても総花的です。私はこれを後輩にゴリ押しして、ローの知的財産法選択者を増やしまくってしまいました。責任を痛感しつつ、オススメ教材をあげます。

初学者レベル(苦手な人向き)

基本書

 小泉先生の特許法・著作権法が、特許法・著作権法を合わせて270頁、と驚異的な薄さを発揮しています。しかも、網羅性もそれなりに確保しています。凄すぎる!…のですが、やはり説明が簡潔で、行間が広くなってしまっています。

 上述のように知財法は「基本概念のとっつきにくさ」が唯一かつ最大のハードルなので、むしろ最初はある程度の厚みがある本が良いと思います。となると、困った時のストゥディアです。特許法はともかく、著作権法であればストゥディア(+加筆修正)で、ひょっとしたら司法試験が乗り切れちゃうのではないか…とも思います。

判例集

 知的財産法も、判例百選が大変良く出来ています。有斐閣と先生方に感謝。一番最初の部分(発明該当性、著作物該当性)はむしろとっつきづらいので、ストゥディアを読了してから読んでもよいかもしれません。

基礎レベル(司法試験対応)

基本書

 これは「入門」「標準」という甲乙つけがたい二者からの択一です。特に、レイアウト・文体がかなり違うので、好みが分かれると思います。また、知財は「新しさ」が重要です。下記記事も参照して下さい。

 

判例集

 引き続き、百選と格闘しましょう。はっきり言って、それだけでもかなり大変なので、他の判例集を読む暇は無いと思います。私は絵が結構入っていて楽しい、という不純な動機で知的財産法判例集も買いました。しかし、そんなお金と時間があるなら、「重判潰し」が有効です。知財はどんどん新しい判例が出ます。

 

演習書

 これは、下記記事を参照して下さい。現状、二択(実質一択)ですが、早く有力な対抗馬が現れて欲しいですね!

論証集

 これが最も困るところですね。現状、論証集っぽいものとして市販されているものとしては、ロジスティクスシリーズがあります。情報量は必要十分で、かなり細かい論点も拾っており、予備校の物とは(当然ながら)一線を画しています。辰巳の一冊本は、いかんせん古すぎますね。

 本書は、説明も、フローチャート等を駆使しており、大変わかりやすいです。…が、私はどうしても日本語の感覚が合いませんでした…合う人は、ロジスティクスシリーズで決まり!終わり!で良いでしょう。法改正、最新判例など古い部分は自分で補う必要があります。

※2020年12月8日

 本書の「発展的改訂版」として、プラクティス知的財産法シリーズが出ましたが、こちらは論証集から基本書にシフトしたとのレビュー多数です。私も読んでみます(多分立ち読み…)が、現状はやはり「ロジスティクス」をおススメせざるを得ないでしょうか。

 

筆者の自作ノート

  というわけで、ロジスティクスシリーズの論点を全部拾い、かつ、自分の納得できる言葉に書き換える!(というとカッコいいですが、要は短くする)という高邁な思想で、まとめノートを作っていました。なお、まとめノート・論証パターンの「素材」としては、ロジスティクスシリーズのほか、知的財産法演習ノートや、論点解析 知的財産法の参考答案も使えます。いずれ、まとめノート・論証パターンの作り方、も記事にしたいと思います。

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※2021年4月28日改訂

 読者の柏さんから、著作権法113条1項と113条の2の適用関係、及び頒布権の消尽についてご質問がありましたので、当該箇所の「まとめノート」をアップしてみました。

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 このまとめノートは約80頁と網羅性もそこそこあり、「これ一冊で司法試験合格や!」と意気込んで作った力作(のつもり)です。結果、60点だったわけですが…。いや、教材は良かったんだけど、最初の科目で緊張してたからさっ(遠い目)。

 それでもいいよ、欲しいよ!という奇特な方は、下記のルールに合致する方のみ、無償でメール送付致します。

※2019年10月19日改定

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応用レベル(上位合格を狙う方)

基本書

 中山先生の体系書は説明不要ですね。分厚いですが、読みやすいです(法律書の書評の決まり文句)。著作権法逐条講義は図書館へGO。

 

演習書

 選択科目は、ぶんせき本が無いのが受験生の悩みです。法学セミナーの解説(最近は田村先生が執筆)も良いと思いますが、私のオススメは、小松法律特許事務所さんが無償で公開されている、司法試験の参考答案です。非常に実践的で、簡潔明瞭な答案例です。受験生の時はしょっちゅうアクセスして、拝読していました。有名ですよね。

司法試験 | 小松法律特許事務所

まとめ本

 まとめノートは私のようにロジスティクス等の論証集ベースにするのも良いですが、薄い基本書をベースにするのもありだと思います。その際の候補としては、上記の小泉先生、ストゥディアに加えて、リーガル・クエストも良いと思います。同書は最新の教科書で、また書評もアップしたいと思います。記述が鋭く簡潔なので、上級者向きかな、とは思います。