だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

法科大学院(法曹コース)の予習・復習法

 こんにちは、たすまるです。最近、たくさんの質問コメントを戴いており、どうもありがとうございます。おかげで書くネタに困ることがありませんし、程よい外圧となっております。さて、ここのところ多いご質問が、

  1. ロースクールの授業の中には司法試験とはあまり関係のない授業もあったかと思いますが、どのように司法試験の勉強と両立なさっていましたか?
  2. 講義の予復習はどうされていましたか。
  3. 復習と予習のバランスがうまくいきません。どのようにロー時代は勉強されていましたか?

 というものです。これらのご質問の最大公約数として、法科大学院(以下、字数削減のためローと言います)の予習・復習の方法の一般論を考察し、その後、筆者の具体例をご紹介したいと思います。

講義についていくべきか

 予習・復習の方法を検討するにあたって、一応検討しておく必要があるのが、「そもそも講義についていくべきかどうか」という問題です。

講義役立たず論

 まず、冒頭の質問1.にもあります、「ローの一部の講義は司法試験に役立たない」ーよってついていく必要がないのではないか、というご意見・ご質問が多々あります。確かに、ローの講義にはなかなかオタク的なものもあります。

判断できる学力をつけよう

 しかし、そもそも論として、基礎的な学力を欠く人ー未修者コースの学生の大半ーに、「ある講義が司法試験に役立つかどうか」なんてわかるんかい。単なる風評に過ぎないんじゃないの。というものがあります。英語の学修で、Be動詞・一般動詞の区別を習う際に、「この概念が、これからの自分の英語学修にとって必要か?」を判断できないのと同じです。

 司法試験に一発上位合格した歴代の先輩を3人くらい連れてきて、3人が3人とも「あの講義は役に立たない」と断言すれば、話は別です。しかし、筆者の経験上では、こんなことは稀です。上記の反論に対しては、①早ければ半年後、遅くても1年後に、講義の必要・不要が判断できるようになるためにも、一所懸命予習・復習すれば良いんじゃないの?というのが筆者の提案です。

そこまで不要な講義も無い

 また、講義役立たず論に対するもう一つの反論ですが、法科大学院不要論が叫ばれ、資金難からどんどんローが潰れていく中、司法試験の合格率を全く気にしない講義をしている教授はほぼいないと思います。これは(下記の通り)、自分に十分な学力がつく司法試験合格前後にならないとなかなかわからないのですが、ローの教授の講義内容はだいたいこんな感じになっています。

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 A教授は問題意識高いぞタイプで、非常に難しい論点も扱うわけですが、まあそれでも司法試験合格に必要な知識の80%は網羅しているわけです。問題意識ちょっとずれてるぞタイプのB教授も同様です。講義内容の(少なくとも)過半は、司法試験合格に必要な知識のはずですので、これを常に回収しよう、と心がける方が合理的です。

予習・復習で死ぬ論

 次に、講義についていくのは良いとしても、「予習・復習の量が多すぎ、死にそうです。自分の勉強時間が全くとれません」よってついていけません、というものもあります。読者の皆さんからも、そのようなご相談が多々寄せられます。筆者のローにもそういった悩みを持った友人がたくさんいましたし、筆者自身もそうでした。

 重要なのは、この悩みに対する対策です。ほとんどの学生が、予習・復習と自分の勉強?なるものの、中途半端なミックス勉強でお茶を濁します。結果として、司法試験には当然落ちますし、「ローは試験に役立たない」という読後感となります。

 しかし、上記のとおり、いかに個性的な講義であっても、そこで扱われている知識の過半は司法試験合格に必要なものです。だとすると、そもそも予習・復習で死にそうなのは、残念ながら自分の学力が不足しているからです。その分の学習は、結局どこかでしなくてはならないものです。

 そして、なぜ自分の勉強時間が全くとれないか、と言いますと、上記の通り、①そもそも学力不足で、何が必要か不要かがわからず、自分の勉強法を確立しようもない。ということに加えて、学力不足を抜本的に解決しないため、いつまでたっても講義に「ついていく」ばかりで能動的に学習する余裕がないというだけのことです。

 学力がついてくれば、講義は単なる復習になります。というより、講義についていくどころか、講義を先導することができます。筆者は、猛烈な勉強量により急激に知識量を増やしていったので、この①~③のテーゼには根拠なき自信があります。

 学修のどこかの段階で、まとまった量の知識を一気に入れる必要があり、それは早ければ早いほど良いでしょう。借金を早めに返せば、利子がつかないーその分有利、というのと同じです。勉強初期に「自分の勉強ができない」と悩むのが良いか、受験直前期に「自分の勉強ができなかった」と振り返るのが良いか、その違いです。

 というわけで、再反論としては、「大丈夫。予習・復習で死んだ人はいないから、頑張って耐えて!今勉強しといた方が得だよ!」というしかありません。やたら体育会系の物言いで、申し訳ありません。

どの程度の時間をかけるか

 さて、とりあえずまあ、講義についていったほうが良いー予習・復習した方が良いとして、次に検討すべきはどの程度の時間をかけるか、です。これについては、基本的には、自分の学力と予習・復習に必要な時間は反比例する、と考えるとわかりやすいと思います。一応、「ローの実力」も加味しつつ、筆者の肌感に基づき、いい加減なマトリックスを作ってみました。

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ローの実力について

 ローの実力が高ければ高いほど、講義は高度となり、予習・復習にかかる時間は増えそうです。もっとも、実力が高いのであれば、安心してついていける、という訳で、結局のところかけた時間に見合うメリットは回収できそうです。というわけで変数が大きくなります。

 上位と下位の境界線が問題となりますが、一応、法科大学院の平均合格率(既修33%、未修15%)を境界線としておきます。これはなかなか現実的な数字かと思います。筆者は、ギリギリ上位のロー出身でした。

自分の学力について

 その上で、自分の学力に従って、予習・復習時間を設定しましょう。上記の通り、学修初期は右も左もわからないー何が必要か不要かもわからないーはずですので、一心不乱に予習・復習すれば良いと思います。自分の学修が進めば進むほど、講義は「わかっていることの再確認」の割合が高くなっていきますから、予習・復習にかかる時間は劇的に減っていきます。筆者の予習・復習にかける時間は下記の通りでした。どんどん減っていきます。

  • 1年生(上記表の①)
    → 90分の講義の予習・復習時間は約5倍の7.5時間
  • 2年生(上記②)→ 約3倍の4.5時間
  • 3年生(上記③)→ 約1倍の1.5時間

予習すべきか、復習すべきか

 次に、講義についていくーと言っても、予習に重きを置くか、それとも復習重視か、という問題もあります。これについても、基本的には、自分の学力との反比例関係が認められると考えています。先程の表に活躍してもらいます。

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 知識量が少ないほど、予習をベースとすべきです。訳のわからないことを講義で聞かされて、よけいやる気が出なくなるのでは本末転倒です。反対に、基礎的な知識が身についていけば、とりあえず講義に出て、誤解していたところ・理解が甘かったところだけ復習すれば良い、という考え方になっていきます。十分な実力がついてくれば、「復習オンリー」に切り替える方が合理的な場合もあるのではないかと思います。

筆者の予習・復習法

 はい、最後になりましたが、筆者(たすまる)の具体的な予習・復習法をご紹介したいと思います。むしろここが本丸ですかね。他の執筆者のみなさん、読者のみなさんの予習・復習法も知りたいので、コメントなど戴けると嬉しいですね。

予習=本学習、講義=復習化

 まず、驚くなかれ筆者はローの3年間を通じて、ほぼ「予習オンリー」でした。講義後にする勉強と言えば、「論証集の改訂」だけです。なんでそんなことになったのかというと、

  1. 純粋未修は筆者だけだったし、予備校にも通っていなかったので、とにかく綿密な予習が必要だった
  2. 綿密な予習を続けるうちに、なるほど!「予習」って言われてるけど、実はこれが「本学習」なんだな、ということに気づく。「予習」が本番ー最も重要な学習で、「講義」は予習内容の正確性の確認ーすなわち、講義は「復習」みたいなもんです。だって、時間的にも予習は講義の5倍はかかるんだしさ。
  3. というわけで、自分なりのペース(後述)で、たんたんと予習をしていくというのが学習の基本スタイルとなる

というわけです。この④予習で本学習、講義で確認、それ以上の復習は不要テーゼは筆者独特なので、良い子は真似しないでね系かもしれません。

予習と講義の間隔を空ける

 くどいほど申し上げていますが、講義内容の過半は司法試験に必要な知識です。従って、予習といってもその目的は「講義に対応するためにやる」のではなく、「司法試験に必要な知識を得る」ことになります。そうすると、講義とは無関係に、淡々と予習を進めていってもそれほど実害はなさそうです。むしろ、上述の通り、講義それ自体は単なる確認だとすると、⑤予習はなるべく早めにやるーすなわち、講義(復習)との間隔を空けた方が良いという結論に至ります。記憶の定着のためには、ある知識に出会い、それをチェックする間隔はなるべく空けた方が良いからです。下記記事もご参照下さい。

 筆者は(だいたい)1ヶ月~2ヶ月後の講義の予習をしていました。こうすると、忘れた頃に講義がやってくるので、暗記には効率的です。「講義でテキパキかっこよく応えたい!」という中学生的・行為主義的感情も理解できないではない(二重否定w)ですが、大切なのは結果的な暗記なので、筆者は努めて予習と講義の間隔を空けていました。1年生の夏休みは、1日13時間くらい予習をして、夏休み中に秋学期の講義内容の50%以上は予習を終えていたと思います。

具体的な予習方法

 読書、短答、演習です。そりゃそうですよね。その具体的方法論は?っていうのは、要するに勉強法そのもの、ということで、淡々と紹介していっているつもりですので、過去記事をご参照下さい。下記は一例です。

  最も重要な点だけを再掲しておきますと、上記「論証パターンの暗記法2」で触れた通り、予習の最後には、必ず論証集を開き、論証パターンを改訂すべき、というものがあります。これを復習のとき、すなわち講義終了後に教授に持っていって、「先生、私は◯◯という理由から、このような論証を準備しています。先生の講義内容とは、△△の点が矛盾するのではないかとも思うのですが、その点どうでしょうか?」などと聞いてしまいましょう。というか筆者は聞きまくっていました。

 このようにすれば、講義と司法試験の距離をさらに縮めることができます。上述の「講義役立たず論」では敢えて触れませんでしたが、講義を成立させるには、学校と、教師と、学生が必要です。ローの講義が仮に司法試験に役立たないとすれば、その要因の一つには、学生の工夫不足があると思います。

 ⑥予習の成果物ー論証パターンの精度を、講義&質問で確認する、というのはかなりオススメできる予習方法かと思います。

まとめ

 割と論理展開が雑な記事でしたので、もう一度だけ、重要だと思うテーゼをまとめておきます。じゃあそのまとめだけ書けば良いんだよ、というのは置いといて下さい…。

  1. 予習・復習が必要か不要かを判断するために、予習・復習すべし
  2. 予習・復習の負荷が高いのは、基礎的な学力不足
  3. 学力不足という負債は、早めに返済した方が得である
  4. 予習で本学習、講義で確認、それ以上の復習は不要
  5. 予習と講義の間隔を空けるべし
  6. 予習の成果を論パにまとめ、講義で確認すべし