だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

倒産法の基本書・判例集・演習書リスト〔2019年版〕

 こんにちは。ありまるです。今回は倒産法のおススメ教材リストを紹介したいと思います。倒産法は、全体像のイメージが沸かないと各種手続きの意味合いを理解しづらい、という特徴があると思います。

 そのため、まずは百選に掲載されている「○○手続の概要」という図を見ながら、今勉強しているテーマは手続きのどの時点で問題となるかイメージして勉強するといいと思います。

 倒産法を勉強していると、民法の理解が試される場面が多々あります。特に担保物権あたりの基本的な理解は、倒産法を勉強することで一番深まったと思います。かといって、倒産法で問われる民法の理解は限定されているので、民法が苦手な人でも怖がることはないと思います。

 最後に最大の推しポイントとしては、やはり実務で役立つ率が高いということでしょうか。実務に出ていない立場で語るのもアレですが、学部orロースクールの先輩たちから実務で倒産案件を扱うことは多々あると皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。また、修習で倒産案件を扱ってるというローの同期の声を度々聴きます。そのため、倒産法は一部の特化型事務所は抜きにして実務で役に立つと言えると思います。

 倒産法に関しては、たすまるさんの目が届かないのでコイツ大丈夫か?信用していいのか?って思われる方も多いんじゃないでしょうか( ;∀;)。どんなにミスっても答練・模試でB未満の点数はとっていなかったからある程度信用してください。ある程度。てか、ブラウザとじないでぇーー!!

 前置きが長くなりましたが、オススメ教材を紹介していきます。

初学者レベル(苦手な人向き)

 基本書

 山本和彦先生の倒産処理法入門 第5版が、破産、民事再生、会社更生、特別清算、そして私的整理から倒産ADRに至るまで、倒産手続きの全体を簡潔にわかりやすく解説しています。そして356頁というそこそこな薄さ。しかし、芦部憲法みたいに行間が広いという難があるので、初学者にはオススメできません。

 そこでオススメするのが、基礎トレーニング倒産法です。各種重要な手続きの記述が充実しており、平易な表現が用いられており読みやすいと思います。また、他の基本書では触れていないような細かい条文までしっかり明記しており、基本事項のかゆいところに手が届く本なので最後まで使い道がある本です。

 民事再生法入門もオススメです。基礎トレーニング倒産法と同じく重要事項の説明が厚く、なおかつたまに問題意識が高い話が盛り込まれているので、初学者から最後まで使えます。そして、倒産法は手続きの処理方法を問われることが多々あるため、236頁という驚きの薄さで手続きのフローをしっかり説明している点も超推しポイントです。

判例集

 倒産法の百選は、他の百選と同様に玉石混交ですので、基本書と並行して読み進め、重要なテーマは解説まで読み、そうでないものは事案と判旨に留めるなど、メリハリをつけて読むと効率がいいかと思われます。

基礎レベル(司法試験対応)

基本書

 私はこの本を辞書のように使っていました。この本は初っ端から破産・民事再生・会社更生手続の対比をしつつ説明を展開していくので、初学者が読むと苦痛かと思われます。とりあえず合格答案を書けるだけの知識が欲しい!という人はこの本があれば十分です。もっとも、近年、倒産法の重要な判例が次々と登場しています。そのため最新判例のカバーをしなければなりませんが、それは下記の重要判例解説あるいはLEX等で補っていきましょう。

判例集

 倒産法には、民法と折り合いがついていない部分があったり、解釈の煮詰まっていない部分があります。当然ですが、それらに対する裁判所の判断が掲載されている最新判例はそれが現時点での正解として扱われることになります。そのため、必ずチェックする必要があります。

演習書

 これについては、司法試験レベルを超えていると噂される倒産法演習ノート22問をやるか、司法試験の過去問を解いて小松法律特許事務所さんが無償で公開されている簡潔明瞭な参考答案を見るという2つの方法をオススメします。まずは後者から実践し、過去問の相場観を得たら前者へという順序で取り組むのがいいかなと思われます。というのも、倒産法演習ノート22問は全問の参考答案がついているのですが、どう考えても司法試験であの量の文章は書けません。そのため、参考答案を活用し現実的な答案のイメージを身に着けた上で、メリハリをつけた答案を意識つつ本書を読むと効率がよくなるし答案構成の練習にもなるのでオススメです。

 倒産法演習ノート22問について、下記記事で詳細に紹介しています。

司法試験|小松法律特許事務所

www.daitai.net

論証集

 筆者は判例百選の判旨の部分を自分で論証集のようにカスタマイズして用いていました。というのも、市販されているものでこれといった論証集はなかったからです。アガルートの論証集は書き方や事案の要旨も踏まえており、薄いのにかなりいい感じではあったのですが、出会ったタイミングが遅かったです。

 また、司法試験には毎年判例百選から1題出されているので、判例百選の重要テーマについては解説まで読むことは絶対にした方がいいです。判例百選の解説に先端的な問題意識の提示しかしてくれていない時も多々あります。その時は自分でLEXなりなんなりで調べましょう。

応用レベル(上位合格を狙う方)

基本書

 1342頁あります。持つと重いです。最後の寄る辺といったところです。

 一度だけこの本に頼ったことがありまして、それは民事再生手続きにおける解除特約の有効性の論点について調べた時のことでした。補足意見がのたまうことがおかしいと思い、わらにもすがる思いでこの本を開いたら、何も解決しなかったので速攻で文献を探しに行った記憶があります。正直、辞書的な使い方をするならアリだと思います。情報量が半端ないですからね。

演習書

 倒産法演習ノート22問の関連問題は問題意識がものすごく高いです。ただ、その解説がついていないため自学には向いていません。先生を巻き込んだハイレベルゼミでやるならばアリだとは思います。もっとも、現場思考問題は基礎基本から現場で頑張って解くと割り切って、判例百選の解説に挙げられた先端的な論点の深堀りや手続きの流れをガッチリ抑えた方がコスパがいいと思います。

結びに

 いかがだったでしょうか。拙い説明でわかりにくいところもあったかと思います。コメント欄になんでもいいので質問してくださるとありがたいです。きっと暖かい気持ちになります。