だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

民事訴訟法の基本書・判例集・演習書リスト

※2019年8月12日 改定・追加により2019年版としました

 各教科のオススメ教材リストの第4弾、民訴法です。眠素法とも言われるように、かなりとっつきにくい・理論的な学問ですが、反対に、基本概念(当事者、訴訟物、弁論主義、既判力、複数訴訟)をしっかりと抑えておけば、演繹的な論理展開で楽ができる、というような気もします。ちなみに筆者は苦手でした(下記記事も参照)。

初学者レベル(苦手な人向き)

基本書

 苦手な科目を克服するには、薄い本を何度も回す、という対策が有用です。簡単な本を一読で理解する、というのとは違うので要注意。本書は、290頁という薄さの中に、①基本概念の正確な定義、②重要判例の判旨、③重要論点には、学説(新堂説等)の紹介まで盛り込んであり、スキの無い、素晴らしい基本書です。ストゥディアシリーズは良書揃いですが、その中でも本書と会社法は特にオススメです。有力な対抗馬としては、NBS(日評ベーシックシリーズ)があります。

判例集

 民訴法の判例百選はかなり使えます。初学者の段階から百選は読んでおいた方が良いと思います。他に有力な選択肢もないように思います。なお、一部の解説はかなり難しいので、スルーしてもOKです。

演習書

 ※2019年2月11日 コメントを頂いたので、加筆しました。

 初学者用の演習書としては、これまた工藤北斗先生の本が良いと思います。対抗馬としては、民事訴訟法 (伊藤塾試験対策問題集:論文)や、Newえんしゅう本〈5〉民事系民訴があり、この順番に難しくなっていきます。物足りないな、と感じる人は後二者でも良いと思いますが、そうだとすれば後述のロープラか基礎演習に取り組んだほうが良いかと思います。

基礎レベル(司法試験対応)

基本書

 ストゥディアに書き込みをしつつ、ページを足す(A5で印刷して貼り付ける)などして50頁分ほどの情報を足せば、それで十分司法試験に対応できると思います。というか、最強の基本書兼まとめノートになるかもしれません。もっとも、いずれにせよ情報の元ネタとしての、厚めの基本書は必要になります。以下の2冊はどちらも2通読はしましたが、甲乙つけがたいです。もっとも、体系も文体もかなり異なるので、既判力の客体的範囲、などを読んでみてわかりやすいと感じた方にすれば良いのではないでしょうか。なお、下記記事も参考にして下さい。

判例集

 基本的に百選で良いと思いますが、(筆者のように)田中豊先生ファンは、こちらの判例集がオススメです。最高裁調査官を務められた先生で、非常に論理的な語り口でわかりやすいです。また、憲法判例の射程等の近時の判例集と同様、判例の射程が丁寧に分析されています。

演習書

 これまた、下記2冊は甲乙つけ難いです。いずれも共著なので、上記の高橋民事訴訟法概論vsリーガルクエストと異なり、体系や文体が全然違う、というわけではありません。内容的には、Law Practiceの方がほんの少し簡単で、その代わり網羅性が高いように思います。

 また、民訴法の答案の型、というよりも論理の運び方がいまいちしっくり来ない… という方は、下記演習書にチャレンジしてみるのも良いと思います。

論証集

 色々な候補があると思いますが、私は工藤北斗先生の論証集を上記「概論」でほぼ書き直して使っていました。最近改定されたこともあり、おススメです。

副読本

 基本概念の習得でつまづかせない、ということを目的に書かれた論点解説本です。学生の陥りがちな「誤解」の実例を挙げて説明してくれるため、非常にわかりやすいです。いずれ書評を書きますが、素晴らしい本です。どーーーしても民事訴訟法に馴染めない受験生は、読んで見る価値ありです。

※2019年11月16日 記事書きました!

応用レベル(上位合格を狙う方)

基本書

 民訴法の「辞書」というと、じゅーてんこーこと重点講義民事訴訟法(上) 第2版補訂版が有名ですが、私はむしろ、本書の方が高橋説(の背景にある新堂説)の考え方がスッキリと理解できるような気がしました。じゅーてんこーよりは薄いですしね。民事訴訟法概論の「お供」にはピッタリかと思います。

演習書

 高い問題意識に触れるには、じゅてーんこーがベストです。筆者は民事訴訟法が苦手だったので、じゅーてんこー潰しは早々にあきらめて、本書で「ちょっとひねった問題意識」に触れていました。論証向きの短文で構成された文体も魅力です。

その他

 いずれ書評をアップしますが、私が民事訴訟法で最も好きな本が、本書です。いや~スゴイ本です。簡単に言うと、百選(の中でも特に重要な)判例を、要件事実論でバラバラにして分析する、という本です。抽象的な理論(例えば、当然の補助参加)を認めると、どの要件事実がどう変わって、どう判決が変わるのか、といった具合に具体的な分析をしていきます。本書を読むと「意味わかんない問題が出たら、とりあえず双方の主張を要件事実に分解しちゃえば、なんとかなるかも」という謎の自信がつきます。