だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、平成30年司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

答案の書き方<基礎編・法的三段論法>

法的三段論法とは何か

 さて、問題文の「問題」が発見できるようになったら(下記記事参照)、その解決です。 

 法律問題の解決には、法的三段論法なるものが使われます。なお、後述しますが、「論法」とある通り、これは書き方だけでなく考え方も含む問題です。この法的三段論法が、最初は取っつきづらいようです。慣れてしまうと、あまりにも当然で最初の辛さを忘れてしまうんですよね。

 かくいう筆者も、完全な未修者だったので、最初の半年に10回は「法的三段論法ができていないよ」と言われました。結論から言えば、こんなモノはなんだかんだいっても慣れるので、恐れるに足りません。もっとも、早く慣れてしまわないと本来注力すべきインプット&アウトプットが出来ないことになります。3年間で合格するには、半年~1年くらいで身につけてしまう必要があります。

 さて、法的三段論法って何だ?という話は様々な文献で散々取り上げられているので、省略したいところですが、一応書きます。

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 と、いうやつですね。まあ、これはこれで意味はわかるのですが、意外とスルーしがちなのが、「そもそもなんで法的三段論法なんて守らないといけないのか」です。これが腑に落ちていないと、そりゃあ法的三段論法が身につくのも遅れます。何事も、根拠・理由は一応考えておくべきです。筆者も、当初はかかる「論法」の必要性がよくわからず、学習がなかなかはかどりませんでした。

 法的三段論法の必要性

 翻って、なぜ法的三段論法の必要性について、丁寧に説明してくれる書物にあまり出会ったことがありません。当然だろ!ということでしょうか。そのヒントとして、こんな記載があります。

法律実務家が他人を説得する論理は、当事者であれ裁判官であれ、洋の東西を問わず、皆この「法的三段論法」によっているんだ。事例演習刑事訴訟法 第2版 1頁)

  なるほど。法的三段論法は「説得の論理」なんですね。それはそうと、下記記事でも紹介した「事例演習刑事訴訟法」ですが、そのはしがきである「設問を解く前に」は、司法試験受験生に必要なマインド・スキルとは何か、わかりやすく解説したもので、全受験生必読だと思います。はしがきだけでも読んでみて下さい。 

 話題がそれましたが、法的三段論法が「説得の論理」だとして、なんで法的三段論法で説得できる&説得されちゃうのか、という話です。これは、大前提となる法規範が、抽象的・一般的命題で、万人が了解可能なものだからでしょう。木村草太教授も、法とは普遍的な価値を追求する規範である-と書いてました。出典を忘れてしまいましたが…。

 換言すると、弁護士が「被告Yがかわいそうじゃないか!全事情から、民法177条を被告に適用すべきだ!」とか、裁判官が「本件では、被告Yには全事情から民法177条を適用すべきでない、よって請求認容」とだけやっちゃうと、当事者・裁判官以外の誰も法解釈の妥当性がわからない…という事態に陥ります。本当の意味でのケース・バイ・ケースですね。法適用には、同種の他の紛争解決と比べたときに、「うん、公平だよね」と言えるバランスが重要であり、法が抽象的・一般的で万人に了解可能だということは、この公平さを担保していると言えます。

法的三段論法のポイント

①法規範(大前提)は抽象的に

 さて、このような法的三段論法の必要性、というより意義から、一つの帰結が導かれます。それは、「大前提となる法規範(法解釈による規範定立)は、万人が了解可能なように、抽象的・一般的な論理操作で行わなければならない」ということです。「え。当然じゃん」と思ったアナタ、法学部出身じゃないですか?初学者には、ここが結構なつまづきポイントだったりするんです。

 問題発見の後、「民法177条の趣旨は…」と条文の解釈→規範定立のブロックに入ったにも関わらず、「甲乙やXY」等の問題文の具体的事実が出てきてはいけない、ということですね。

②事実(小前提)のあてはめは具体的に

 反対に、事実のあてはめは具体的・個別的に摘示して行わなければなりません。「これを本件についてみると…」と、あてはめブロックに入ったにも関わらず、「そもそも民法177条の趣旨は…」と抽象的な論理操作が出てきてはいけない、ということですね。

③各ブロックは明確に区切る

 で、これらの大前提(法規範)・小前提(具体的事実のあてはめ)・結論は、ブロックごとに明確に区切られていなくてはなりません。これは読みやすさという点もありますが、上記の通り、条文解釈→規範定立に具体的事実が混入することを防止し、反対に、事実のあてはめに抽象的な論理捜査が混入することを防止するという意義があるように思います。

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具体的な書き方

 百聞は一見にしかず-というわけで、「問題発見」で使用したケース(下記記事参照)を再利用して、

 

 法的三段論法が出来ていない答案(筆者の初期の答案)と、だいたい出来ている答案(司法試験受験前の答案)を見比べてみます。

  Xは、マイホームを建てるため、Zから甲土地を買い、代金を支払った。しかし、Xは甲土地の所有権移転登記を経ていない。この話を聞きつけたYは、以前からXが大嫌いだったので、Xのマイホーム取得を邪魔するため、Zから甲土地を買い、その上にプレハブの倉庫(乙建物)を建てた。ある日、甲土地を訪れたXは、乙建物が立っていることにびっくり仰天、Yに大してその収去を求めた。XのYに対する請求は認められるか。

 法的三段論法ができていない答案

1.  XのYに対する請求は、所有権に基づく建物収去土地明渡請求である。

2. これに対してYは、自らは民法177条の「第三者」にあたるから、対抗要件たる登記を経ていないXは自らの所有権をYに対抗できない、と主張することが考えられる。

3.(1) 同条の趣旨は、物権変動の公示により、同一不動産につき自由競争の枠内にある利益を有する第三者を、不測の損害から保護することにある。
  (2) だとすれば、本件のYのように、すでにXが甲土地を購入したことを知りながら、そのマイホーム取得を邪魔するという信義則(1条2項)に反する目的で同一の土地を購入するなどという者は、自由競争の枠内にある利益を有しているとはいえないから、同条の保護を及ぼすべきではない。よって、Yは「第三者」にあたらず、その主張は認められない。

4. 以上より、Xの請求は認められる。

 どうでしょうか。書いてある「内容」は、そうそう、だいたいこんな感じ!というものです。が。法的三段論法は出来ていない、という評価になります。法規範-具体的事実-結論のブロック分けが曖昧で、法規範の具体的事実が混入しまくっています。

 非法学部出身の筆者としては、「説得的でそこそこ読みやすいんだから良いんじゃない?」と思いますが、法的三段論法重視の教授・採点委員には減点されること間違いなしです。

法的三段論法が出来ている答案

1.  2. 上記の答案例と同様

3.(1) 同条の趣旨は、物権変動の公示により、同一不動産につき自由競争の枠内にある利益を有する第三者を、不測の損害から保護することにある。

 だとすれば、①先行する物権変動につき悪意であり、かつ、②登記の欠缺を主張することが信義則(1条2項)に反する者は「第三者」にあたらないと解すべきである。そのような者は、同一不動産につ自由競争の枠内にある利益を有するとは言えないからである。

  (2) 本件でYは、自分より先にXが甲土地を購入したことを知っていた(①充足)。また、Yが甲土地を購入した目的は、Xのマイホーム取得を邪魔するというものであり、かような目的を実現するために登記の欠缺を主張することは信義則に反する(②充足)。
  (3) よって、Yは「第三者」にあたらず、その主張は認められない。

4. 以上より、Xの請求は認められる。

 (1)ブロックは、法規範、条文→趣旨→解釈→規範定立、という流れに、一切具体的事実は出てこない。(2)ブロックは、事実のあてはめのみ。(3)ブロックは、結論。…と、明確にわかれています。

 この答案はベストではありませんが、一応、こういう書き方や思考パターンができること、というのが重視されているわけです。

法的三段論法の身につけ方

 法的三段論法は、「論法」とある通り、答案の書き方だけでなく、法律家の思考枠組みともいうべきものです。従って、これができないと「共通言語がない≒話通じない」状態となってしまい、悪い点数をつけられるにとどまらず、基本書を誤読したりすることにもつながってしまいます。

 頭書にも述べましたが、なるべく早く身につけてしまいましょう!身につける方法ですが、教授でも実務家でも合格者でも何でも良いので、答案を見てもらい、「法的三段論法が出来ていない」と言われたら、「え?どの部分がですか?じゃあ出来ている例(答案例)を見せてくれませんか?」とゴリ押しすることをオススメします。

 こればかりは「使用する言語」の問題-例えるなら、英語の発音の問題に近いか-なので、上記のケース・スタディからも明らかなように、NGな答案とOKな答案をたくさん見比べるのがもっとも手っ取り早いように思います。私もそんな風に学びました。といっても、同期のT君の答案を数回読ませてもらっただけですが。