だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

答案の書き方0(初歩編・法律答案の作法)

※2019年10月26日 少し追記しました。

 こんにちは、たすまるです。昼食@ファミレスで記事を書いていたら、司法試験の勉強をしていると思しき方を見かけました。頑張れ!でも集中できるのかな。さて、下記記事でも述べましたが、「初学者向けの記事」を増やしていこうと考えています。

 という訳で、超初学者向けに「そもそも法律答案って何?どう書くの?」という記事を書きます。なお、純粋な初学者の方でなくてもある程度は役に立つと思います。ネット上で公開されている or 添削を依頼された各種の答案を拝読していると、勉強が進んでいるにも関わらず、基本的な事項を勘違いしている、法律答案の体をなしていない、というものに巡り合うからです。毒舌ですみません!

法律答案って何?

 まずはここから考える必要があります。筆者は事前準備ゼロの非法学部出身者でしたから、学習開始後3ヶ月で訪れる定期試験で、初めて法律答案を書いた際には、相当面くらいました。

  • 聞かれていることに答える、という点では通常の英語や数学の答案のようである
  • 自由に自分の考えを書いてよい、という点では就活の自己PRのようである
  • とはいえ、一定の形式があるようである

 という3点がごっちゃになって脳みそに襲い掛かり、まあ簡単に言うと爆死です。試験後、教授に呼び出されて「君の答案はめちゃくちゃだ」とご指導戴きました。そんなこたわかってるんです!どうやって直すんですか!という気持ちでしたが。

 さて、結論から言うと、上記3点(後述の通り、実は4点)の「法律答案の特徴」はいずれも正しいもので、ある種、「法律答案であること」の要件ともいえるものです。ただ、この3点は異なるレイヤーに属しており、重要度も異なります。初学者の段階から、このことをしっかりと意識していると、自然と、感じの良い答案が書けるようになると思います。

1. 問いに「答える」

 法律答案にとって、最重要のルールが「問いに答える」ことです。問いに答える、ということは「法律答案」の要件です。問いに答えなければ、単なる独り言でして、問いに答えることの重要性は予備校でも、法科大学院でも散々強調されるところです。某予備校のテキストの参考答案では、「(問いの)オウム返し」等と書いてありますよね。令和元年司法試験予備試験・民法で言いますと、

〔設問1〕

 Bが本件債務の履行を怠ったため,平成29年3月1日,Dは,本件土地について抵当権の実行としての競売の申立てをした。競売手続の結果,本件土地は,D自らが950万円(本件債務の残額とほぼ同額)で買い受けることとなり,同年12月1日,本件土地についてDへの所有権の移
転の登記がされた。同月15日,Dが,Cに対し,本件建物を収去して本件土地を明け渡すよう請求する訴訟を提起したところ,Cは,Dの抵当権が設定される前に,Aから本件土地を贈与されたのであるから,自分こそが本件土地の所有者である,仮に,Dが本件土地の所有者であるとしても,自分には本件建物を存続させるための法律上の占有権原が認められるはずであると主張した。
この場合において,DのCに対する請求は認められるか。なお,民事執行法上の問題については論じなくてよい。(令和元年司法試験予備試験・民法より引用)

 と、なんだか色々書いてありますが、結局のところ問われているのは赤太字部分、つまり「DのCに対する請求は認められるか」です。従って、答案の結論としては、「DのCに対する請求は認められる or 認められない」の二択です。なんだ!50%の確率で正解できるんですね。そう考えると気楽です。

2. 「問い」に答える

問いの内容を把握する

 色々と考え方はあると思いますが、筆者の思うところ、二番目に重要なのが、問いに答える」ことです。あれ?①であったじゃん、という感じですが、①は「問いに答えるであって、「答えること」に重きがあります。重要なのは、問われていることが何なのか、を把握することです。ここが、法律答案の独特なところ(と筆者は思う)ので、敷衍します。

法律答案における誘導

 英語や数学には、確立した文法や公式がありますから、(相当に難しい出題で無い限り)正解と、正解に至る論理構造が(通常は)一つに定まります。採点者は楽ですね。

 これに対して法律答案では、(形式的には)何を書いても自由です。確立したルールー法的三段論法等を守って回答する限り、OK!としてしまいますと、多種多様な法律構成・論述が発生することとなり、この優劣を比較するのはほとんど無理です。これを防ぐためかどうかはわかりませんが、法律答案では問いの内容を限定することー誘導が行われます。この誘導に気づき、問われていることが何なのか(出題趣旨・意図)を把握することー問題発見が、法律答案の第2の作法です。

設問における誘導

 先ほどの、令和元年司法試験予備試験・民法で誘導に気づく実例をみてみましょう。なお、予備試験問題ですので、ある程度勉強の進んだ方でないと難しいかもしれません。初学者の方は読み飛ばしても大丈夫です。

〔設問1〕

(中略)… 同月15日,Dが,Cに対し,本件建物を収去して本件土地を明け渡すよう請求する訴訟を提起したところ,Cは,Dの抵当権が設定される前に,Aから本件土地を贈与されたのであるから,自分こそが本件土地の所有者である,仮に,Dが本件土地の所有者であるとしても,自分には本件建物を存続させるための法律上の占有権原が認められるはずであると主張した。
この場合において,DのCに対する請求は認められるか。なお,民事執行法上の問題については論じなくてよい。(令和元年司法試験予備試験・民法より引用)

  の青太字の部分が「問い」の内容にかかる誘導です。敢えて最小限抜き出してあります。この時点で、「答える」内容としてはーDの、Cに対する、所有権に基づく建物収去土地明渡請求が認められるかどうか、ですがそもそもの「問い」の実質的な内容は

  • ❶Dの請求原因が成り立つか、成り立つとして
  • ❷Cが所有権を有するとの抗弁、又は
  • ❸Cに法律上の占有権原が認められるとの抗弁が
  • 認められる→ DのCに対する請求は認められない
  • 認められない→ DのCに対する請求は認められる

 というものである、と把握できます。つまり、上記の請求原因及び2つの抗弁の成否には必ず触れなければなりません。そうでないと、「問い答えた」ことにならないのです。

問題文における誘導

 なお、この「誘導ー問いの内容の限定」は設問だけで行われるのではなく、むしろ問題文にガンガン登場してきます。誤解を恐れずに簡略化しますと、

  1. 法律答案の問題文における「事実(憲法・行政法の個別法も含む)」が設問と無関係なはずはない
  2. 従って、法律答案の問題文における「事実」のほとんどは法律的に評価されるべきー法規のあてはめの対象とすべきー事実である
  3. そうだとすれば、反対に、法律答案の問題文における「事実」はあてはめるべき法規、論ずべき解釈が何かを指し示す誘導となっているはずである

 という訳です。この、問題文の誘導に気づく力ー問題発見力は、インプットとアウトプットの繰り返しによって鍛えるしかありません。初学者の方は、下記記事をご覧ください。

3. ルールを守る

法的三段論法

 さて、全二者問い答えるに負けず劣らず重要なのが、法律答案」の要件である、独特の作法ー代表的には法的三段論法を死守する、という点です。法的文章の作法に則っていないと、採点者が読めません。中学校の数学の答案が、全文ドイツ語で書いてあるイメージです。いくら内容が正しくても、言語が違うので読めないのです。のみならず、法的三段論法(等)ができる、ということそれ自体が、法的思考ができる、という意味で評価点となっています。

 冒頭、初学者時代の筆者が教授に怒られたのも、「法的三段論法(等)が出来ていないー法的思考ができないー評価できない」という点だったように思います。という訳で、まずは、演習書や過去問の参考答案をみて、何度も起案し、法的三段論法を身につけましょう。下記記事も参照して下さい。

その他の作法

 なお、法的三段論法(等)としている通り、法的文章であるための要件は他にも色々あります。全体としての論理に矛盾が無いこと、文章の平易性、結論の妥当性などです。これらの要素については、文章に説得力があること、とまとめられるかもしれません。いつか記事にしたいと思いますが、こうした法的文章の作法を非常に分かり易く解説した本として、下記書籍が挙げられます。とても良い本で、初学者には特におススメできます。筆者も「わかりやすい文章」みたいな記事も書いていましたので、こちらもどうぞ。

法を学ぶ人のための文章作法

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  • 作者: 井田良,佐渡島紗織,山野目章夫
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2016/12/17
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4. 自分の考えを述べる

 さて、③実質的な「問い」に対して、②法的三段論法をもって、①答えることができるようになれば、合格、というよりC答案以上は確定です。この3要件を実現できて初めて、④自分の考えを書く、という「自由」が認められます(下記イメージ参照)。

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 答案は、確かに自分の学習の成果をプレゼンテーションする文章であり、そういった意味で自己PRといって差支えありません。が、上記のピラミッド図をみてわかる通り、自由に書ける範囲は「相手に尋ねられている問いの範囲内」であり、自由に意見を述べる、といってもそれは誘導によって与えられた自由(尾崎豊的…)であることに留意しなくてはなりません。

 これを誤ると、言いたい放題のKY答案ー空気読めない答案の出来上がり、となります。従って、初学者の段階では、まず①②③がきちんとできるようになる、ということを徹底しましょう。

まとめ

 本記事では、法律答案に求められる4要素を、その重要度の順に検討しました。要するに、答案とは「知識の開陳」ではなく「問いかけへの答え」だと思うわけです。

 とはいえ、②問題文の事実は誘導だ!それに気づいて実質的な問いに答えろ!とか、④誘導の範囲内で自分の考えを書け!と言われても、具体例が無いとよくわからないと思います。という訳で、次回は(今回の例題である)令和元年司法試験予備試験・民法を使って、②と④に共通する問題ー「誘導の乗り方」を検討したいと思います。