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30代社会人、妻子あり。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

令和元年度重要判例解説ランキング(公法系)

令和元年度重要判例解説 (ジュリスト臨時増刊)

令和元年度重要判例解説 (ジュリスト臨時増刊)

  • 発売日: 2020/04/09
  • メディア: ムック
 

 さてさて、遅ればせながら、「勝手に重判ランキング」を今年もやってみます。来年受験の方は参考にして下さい。なお、本ブログのポリシー上、当然なのですが、完全に主観です。各ランクの意味付けですが

  • 出題可能性&学習上の有用性(解説含む)を総合判断
  • A=必読。次回百選に掲載される判例。
  • B+=読んでおきたい。主要な基本書で言及されそうな判例。
  • B=可能であれば読んでおくと安心。
  • C=暇があれば読んでおきたい。暇はないと思いますが。

 なお、そもそも重判を学習にどう活用するか、については下記記事(の前半)をぜひぜひご一読下さい。

憲法

  1. 旧優生保護法に基づく強制不妊手術に対する国賠訴訟 B
    → 子を産み育てるかどうかを意思決定する権利ーリプロダクティブ権の、権利性(13条の保護範囲)についての論証が簡潔で美しいです。
     子を産み育てるかどうかを意思決定する権利は、これを希望する者にとって幸福の源泉となり得ることに鑑みると、人格的生存の根源に関わるものであり、上記の幸福追求権を保障する憲法13条の包囲に照らし、人格権の一内容を構成する権利として尊重されるべきものである(本書8頁)
     こういう美しい言い回しは、論パ化しておくと安心です。国賠法の除斥期間に関する解釈は、憲法で出題される可能性はほぼありませんが、不法行為法としては超重要なので、そういう意味でも読んでおきましょう。

  2. 性同一性障害者特例法における生殖腺除去要件の合憲性 C
    → 権利の論理、制度の論理にかかる部分の齊藤先生の解説はわかり易くて面白いです。

  3. 戸籍法上の夫婦同氏制の合憲性 C
    → うーん、民法750条の合憲性の問題が戸籍法に変わっただけのような気がするので、最大判平成27年12月16日だけ読んでおけば良いように思います。

  4. ハンセン病患者の家族が受けた被害に対する国賠訴訟 C
    → 直接の規制を受けたわけではない家族に対する国賠責任を認めたという意味では画期的ですが、論理構成がよくわかりません。基本権保護義務?

  5. 平成29年衆議院議員選挙における一票の格差 C
  6. 都議会島しょ部選挙区(特例選挙区)の合憲性 C
  7. 選挙供託金制度の合憲性 B+
    → 「公正な選挙を実現するためにはしかたない~」という”選挙ルール論”の一適用場面です。供託金制度を「事実上の制約」とした「制約セクション」、「正当化セクション」ー規範定立での”選挙ルール論”の登場のさせ方、審査基準の引き下げ方は、内容が正しいかはさておき、いずれも論証がシンプルで勉強になります。
     加えて、村山健太郎先生の解説が秀逸です。在外国民選挙権判決(最大判平成17年9月14日)と、累次の衆議院投票価値較差判決との枠組みの異同、選挙ルール論の変容についてとてもわかりやすく整理されているので、是非読んでみて下さい。

  8. タトゥー施術業医師法違反事件 A
    → 一連の「憲法の書き方」の記事で筆者がケーススタディとして用いた「タトゥー事件」です。百選に掲載されるかは微妙なところですが、読んで勉強してね!という意味で「A」にしました。憲法適合的解釈(合憲限定解釈)に至る理由付け、解釈の手法も説得的なもので、このような思考枠組みが答案で披露できれば、上位合格間違いなし!というものです。
     尾形先生の解説にもありますが、適用上違憲、実質的(可罰的)違法性など他の枠組みで解決する場合には答案はどうなるか、シミュレーションするともっと勉強になると思います。

  9. 要指導医薬品対面販売規制の合憲性 B+
    → トピック的にも出題しやすいー職業「活動」に、このような形で何らかの規制をかける立法というのは日々行われているためーということもあり、読んでおくと安心だと思います。
     また、審査密度(審査基準)の設定ー権利性、及び制約、裁量権その他の諸要素の検討については、近時の裁判例の典型的なもので、防御権(特に職業の自由)の論証として、見本とすべき判決です。予防原則の使い方も、勉強しておきましょう。まあ平たく言いますと、規制目的二分論など持ち出すとかえってとっ散らかるので、やめておきましょう、ということですかね。

  10. 市議会議員への厳重注意処分とその公表に対する司法審査 B+
    → この手の問題は(思考枠組みとして)「司法審査が及ぶか~」となりますが、「団体の自律権・結社の自由 vs 個人の基本権」と考えておくのが適当だと思います。君塚先生の解説が秀逸で、「統治行為論」「部分社会論」とか「特別権力関係」とか持ち出す必要ないよ~というのが、良く分かります。
     法の世界に全体と部分があり、部分にもルールがある(部分社会論)ことは一般的に了解できても、部分は独立王国ではない(本書27頁)。
     猛烈にカッコよく、かつ分かりやすい説明でした。

  11. 在外日本人の最高裁裁判官国民審査権の制限の合憲性 C

行政法

  1. 生活保護法78条に基づく徴収額の算定にあたり、基礎控除相当額を控除しないことの適法性 C
  2. 勤務時間中にわいせつな行為等をした職員に対する、地公法29条に基づく懲戒停職処分 C
    → 地公法上の懲戒処分に認めらる広い裁量は、「常識」として確認しておきましょう(最判昭和52年12月20日・神戸税関事件参照)。

  3. 市立小学校設置趣意書の不開示情報(情報公開法5条)該当性 C
  4. 交通反則告知書交付にあたり警察官が提示すべき資料・証拠等の範囲と、道交法130条の受領拒否 C
  5. 固定資産評価審査委員会の審査(地方税法432条)で主張しなかった事由を、同委員会決定取消訴訟で主張することの許否 B
    → 審査請求と取消訴訟の関係につき、特許法では審決取消訴訟の審理範囲はメジャー論点ですが、行政法においてはそんなに出題されないような気がします。が!筆者としては、審査請求前置(不服申立前置)と取消訴訟の審理範囲≒主張事由の限界は、行政法では常に意識しておくべき問題であるように思います。「なぜこのような不服申立制度が前置されているのか」を考えることは、当該個別法の仕組み全体を理解するために必要不可欠な要素だからです。

  6. 将来の不利益処分(防衛出動命令)の予防を目的とする、公的義務不存在確認を求める無名抗告訴訟の適否 B
    → タイトルだけでとてつもなく難しそう…そして実際に結構難しいですが、これも読んでおくと勉強になると思います。よっぽどネタに困らない限り、出題はされないでしょう(笑)。ただ、①差止訴訟と、②本件のような無名抗告訴訟、そして③公法上の当事者訴訟としての義務不存在確認訴訟の要件の異同をきちんと押さえておき、適宜切り分けることができれば、行政法で上位答案が書けること間違いなしです。そういった意味で、「自分がわかっているか」という理解のメルクマールとなり得る判決です。

  7. 適正な対価による譲渡等として提出あれた議案の可決が、地自法237条の「議会の議決」にあたるか C
  8. 収支報告書に架空支出が計上された場合における、政務活動費の返還義務の範囲 C
  9. 審査無効訴訟(最高裁裁判官国民審査法36条)において、公選法9条1項の違憲を主張することの許否 C
  10. 市議会議員への厳重注意処分とその公表に対する司法審査 C
    → 上記の憲法10.と同一判例ですね。憲法が本案前の判断(法律上の争訟性、議会の自律権の尊重)、行政法が本案の判断についての解説です。

まとめ

 総じて、公法系はまたまた不作の年ですね。百選級(何はともあれ必読判例)は無いように思います。もっとも、下記記事でも述べている通り、憲法・行政法は判例学習ー判例の思考フレームの追体験がとても重要です。という意味では重判を開き、脳内演習を繰り広げるのも重要な勉強法だと思います。

  次回は民事系を予定しています。そろそろ試験ですが、皆さん、たんたんと頑張って下さい!普段通り勉強して、普段通り受験することが重要です。下記記事もご参照下さい。