だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

論証パターンの暗記法2(暗記の方法&短答対策)

※2021年2月10日 読者のさわさんのご質問により、追記・改訂しました

 こんにちは、たすまるです。前回の記事がかなり抽象的な感じで終わってしまったので、さっそく具体的な「暗記の方法」を検討します。その過程で、筆者の短答対策もオマケ的にご紹介します。

 一応、前回の記事を振り返っておきますと、

  暗記の対象かくあるべし、というものでした。

✖規範そのもの ではなく 〇規範の理由付け

✖規範の正確な文言 ではなく 〇規範の正確な意味内容

もっとも、定義(特に民訴)とされるものは、〇文言そのものの正確な暗記

 

0.暗記の心構え

 まず、暗記に取り掛かるにあたっては、行為主義ではなく結果主義を採用しましょう。要するに、暗記とは、

「論証集を100回読んだ」という行為に価値があるのではなく

「Cランクの論証も覚えていた」という結果に価値があるわけです

 いやこれは当然だろう、とみんな頭ではわかるのですが、どうしても中学生・高校生時代の勉強を引きずって、「〇〇を何回読んだ」とか行為主義に流されがちです。「肢別本は3回回すべき」等は法科大学院では頻出の会話です。それはそれで良いことかとは思いますが、何よりも重要なのは「覚えていた」という結果です。結果主義については、下記記事もご参照下さい。

 それでは早速、筆者なりの暗記の方法論を、列挙したいと思います。一応、「重要な順」で並べているつもりです。

1.モチベーション維持の仕組み

外圧・インセンティブの必要性

 次に、筆者はじめ多くの人が暗記は好きではないと思います。そう信じたい。好きな人はもりもり頑張って下さい。で、嫌いな人は自分に鞭打つ必要があります。「気合だ!暗記は気合だ!」と叫ぶだけでは、何ともなりません。自分が頑張れる仕組みーネガティブな要因としては外圧、ポジティブな要因としてはインセンティブを設計しましょう。

 外圧やインセンティブの設け方については、やや荒療治ですが、下記記事をご参照下さい。

筆者の短答対策

 筆者の「インセンティブ設計」の別の例を紹介しますと、短答対策(なんだかんだ言って暗記の要素大)としては、このような方法をとっておりました。

  1. 司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト 1 平成30年度版― 公法系憲法 等を買って、1周目を解く。

  2. 絶対に間違えようがない!常識!暗記不要!と思った問題(〇、ちなみに20%も無かったな…)を除き、不安な問題(△)と間違えた問題(✖)は2周目で再度解く。
  3. 2周目が終わった時点で、完璧で無かった問題ー△△、△✖、✖△、✖✖の4種類を抽出する。まあ、パーフェクトの問題の半分弱といったところ。
  4. この「抽出」というところが肝で、カッターで切って、問題集から分離し、パンチングし、バインダーにファイリングする。まさに物理的な抽出で、非常に面倒くさいのですが、これが後々効いてくる。
  5. イライラしながら、3周目を解く。〇になったら、おめでとう!あんた卒業だよ!とか言いながら、ビリっとバインダーから追放する。
  6. 4周目、5周目は楽しいし、暗記としても楽になっていく。なぜならどんどんと枚数が減って、薄くなっていくからである。こうして、残り10問くらいになったバインダーを短答試験の前に読み返して、本番にトライ!

 要するに、これも「学習の見える化」の一つですね。短答直前に見直す教材もできますし、なかなかおススメだと思うのですが、どうでしょうか。また、4回も5回も間違える問題というのは、暗記うんぬんの問題ではなく体系的理解が覚束ない、というより誤解がある良い証拠なので、この方法は論文式試験にとっても有用なはず、と勝手に思っています。

※2021年2月10日 追記しました

短答対策の○△×というのは、問題ごとにつけるか、各選択肢ごとにつけるかどちらが良いのでしょうか

 読者のさわさんから、上記のご質問がありましたので、追記します。まず、結論としては〇△✕は、(筆者の場合)問題ごとにつけます。理由はいたって単純明快でして、

  1.  司法試験短答試験の配点は「選択肢ごと」にあるのではなく、「問題ごと」にある。仮に一つの選択肢についての知識が精確無比であっても、イコール得点力アップ、とはならない。
  2.  司法試験短答試験は、(論文試験と同じく)「細かい・断片的な知識」ではなく、「大ざっぱな・体系的理解」を問うている。各選択肢の情報の正誤それ自体ではなく、選択肢群から浮かび上がる、基本的事項の体系的理解が出題趣旨になっている。具体例を挙げると、令和2年司法試験短答試験・民法〔第6問〕の出題趣旨は、各選択肢うんぬんではなく、「物権的請求権の性質(についての通説的見解)を理解していますか?」である。
     だからこそ、上記1.の通り、配点は選択肢ごとではなく、「出題趣旨となっている基本的事項を指し示す選択肢群=問題」に与えられている。

… と、いう感じです。次に、同じくさわさんから、短答対策のための教材についてのご質問です。

過去問パーフェクトの解説や(過去問を解く際に出てきた条文について)六法などにマーキングやチェックをしていましたか?その場合のマーキングの色分けなども教えて欲しいです。

 こちらの結論は、過去問パーフェクト等の解説や六法にマーキングはしない、まとめノート(又はまとめノート代わりの薄い基本書)の当該短答問題の解説にあたる部分に、間違えた問題を「令和2年〔問題6〕」等と書き込んでおくというものです。

(後ほど、参考に筆者のまとめノートの写真をアップします)

 これも理由は単純明快で、本記事にも「2.広げて、まとめる」としていますように、たくさんの教材で色々勉強するのはおおいに推奨されるべきですが→最後は見やすく、使いやすい形で必要な情報をまとめておく(一元化)のが合理的だと考えているからです。また、上記の通り、論文試験と短答試験で問われているのは同じことー基本的事項の体系的理解ーですから、わざわざ「論文用まとめノート」「短答用まとめノート」に分ける必要はありません。

 一元化については、下記の「まとめノート」についての一連の記事もご参照ください。

2.広げて、まとめる

 これも超重要です。何なら、暗記というよりも司法試験の学習法全般に言えることですが、日々の学習は「広げて、まとめる」ことが大切です。

 具体的に説明します。法律なんてもんは、理解して身についてしまえばそんなに難しいものかなぁ?と思ってしまいますが、(筆者含む)初学者にとってはそりゃあもう、言語明瞭意味不明瞭、とっつき辛いことこの上ないものだと思います。

 そうすると、法学に接した初学者の態度は(大まかに言って)2つに分かれるように思います。

  • グループA
    自分が理解し、腑に落ちるまで徹底的に広く、深く調べる
  • グループB
    理解することを早々に諦め、とりあえず点が取れそうな要素を暗記する

 で、筆者の言いたいことは、もーしわけないけど、AもBも、どっちか一方に偏ってはダメ!ということです。AをやるからこそBを忘れづらくなるのですし、Bを意識するからこそAの勉強が合理的になるのです。AもBもやりましょう。と禅問答のような事を言ってもよくわからないので、一応、若干敷衍しておきます。

 下記記事で述べた通り、法律は大学までの勉強科目と異なり、各知識の有機的な繋がりが分かりづらい学問です。

 そこにBばっかりやると、体系的な知識が身につかないー論点ごとの知識が有機的に結びつかないーので、論点の知識の定着度が下がります。要するに忘れやすくなります。リンゴが論点のイメージです。

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 適宜適切にAもやると、知識が有機的に連結するので、忘れづらくなります。枝が体系的知識のイメージです。また、ここが大切なところなのですが、「最後はB-論点の暗記に落とし込まなければならない」という意識がつくと、Aの勉強を「広げ過ぎない・深掘りし過ぎない」ことにもつながります。

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 このように、毎日の勉強は、「広げて、深めたら」→「必ず、まとめる」つまり自分のまとめノートなり、論証集に帰ってくる必要があります。自分のインプットが、どのようにアウトプットに役立つ知識としてストックされるべきなのか。毎日の勉強の終わりは、その日勉強した分野の論点としてどのようなものがあるか、論証集は改訂する必要がないかを確認して終える癖をつけると良いと思います。

3.ストーリーで覚える

 前回の記事ー暗記の対象論と密接不可分な方法論ですが、論証パターンは、規範だけでなく、理由付けをしっかり覚えることが肝要です。そうすると、日々の暗記ー脳内でのリフレインも、「判例は◯◯と判断した。なぜなら、△△だからだー」と、理由付けを含めたストーリーで覚えていくことが効率的です。

 また、〔規範ー理由〕という「ミクロの」有機的連結を作ることは、上述の〔体系〕という「マクロの」有機的連結と相まって、記憶をより強固なものとすると思います。

 このような考えから、筆者は基本書のマーキングを〔定義・赤〕ー理由付けを覚える必要がなく、文言を正確に覚えるものと、〔規範・黄&理由・青〕ー理由付けに重点を置いて覚えるもの、に分けていたというわけです。

4.書かずに、作って覚える

 「書いて書いて書きまくって覚えろ!」的な方法論は、中学校での英単語暗記などで盛んに勧められる暗記法です。筆者もこれは正しいと思います。五感の刺激ですかね。もっとも、論証パターンに関しては、前回の記事で述べた通り、

✖規範そのもの ではなく 〇規範の理由付け

✖規範の正確な文言 ではなく 〇規範の正確な意味内容

 を覚えることが肝要なので、同じ文言を書きまくって覚えるのはそんなに効率的ではありません。むしろ、覚える内容を自分で作るーすなわち、論証パターンを自作することが、記憶の定着にとって有益かと思います。

 論証パターンを「作る」ためには、答案を書きまくるのもとても良いと思います。が、そんなに時間もとれないでしょう。そうしますと、論証の改訂ー自分の論証が、内容的に正しいか、論理的な構成となっているか、コンパクトか、など、何度も何度もチェックすることーが実戦的です。これを何度も繰り返すことで、規範の理由付け&正確な意味内容を脳に「なじませる」というような感覚です。そういった意味で、上記2.の通り、1日の学習の終わりに、論証集は改訂する必要がないかを確認して終える癖をつけることは二重の効果があると筆者は考え、実行していました。

5. 回数・間隔・出会い方

「論証集を何回読むか」という回数、「どれくらいの間隔を空けて問題集を解くか」という間隔といった行為主義的な要素も、一応検討しておかなくてはなりません。

回数・間隔

 筆者の場合は、「学習の見える化」の一環として、論証集の通読回数・間隔をチェックしていました。

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 これを見ると、「通読」として同じ論証集を7回は読んでいた、ということがわかります。もっとも、日々の論証改訂作業はこれに含まれていませんので、なんだかんだ言って同じ論パを20回は読んだと思います。また、間隔は最低でも1か月は空けた方が良いと思います。忘れそうになった頃、もしくは忘れてしまってから読まないと、記憶の定着度は高まらない、というのは一般的な経験則ではないでしょうか。

出会い方

 回数・間隔より重要なのは、論証パターンとの「出会い方」だと思います。同じトピックでも、新聞で2回読むよりは<新聞で1回、テレビで1回見る方が<テレビで1回見て、偶然、友人と1回話す方が、よく覚えているのではないでしょうか。つまり、同一の情報に、様々なメディア、様々な「出会い方」で出会うことが、記憶への定着度を高めると考えられます。

 筆者は、この事を非常に意識していたので、いわゆる暗記カードや論証集を何度も読み返すといった勉強法は採用せず、「同じ意味内容の論証が」基本書、判例集、演習書、過去問に登場していないか、ということに注意しつつ、バラエティに富んだ書籍を読んでいました。論証集の改訂・通読以外は「偶然的・受動的に論証に出会う」ことを重視していたわけです。

 この作業にとって必要、というよりこの作業と並行して行うのが、過去記事でも触れた「リンク貼り」です。

 以上が、筆者が暗記克服のためにとっていた方法論のうち主要なものです。筆者同様、暗記が大嫌い!な読者の方の参考になれば幸いです。