だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

商法の基本書・判例集・演習書リスト

※2020年9月15日 改訂により2020年版としました

 各教科のオススメ教材リストの第8弾、商法です。商法は条文が充実していますので、まずは条文に親しむこと、面倒臭がらず六法を何度も引きながら基本書・テキストを読むことが重要と思います。←これは商法の受験指導の決まり文句ですが、マジでそうなのでちゃんとやりましょう。なお、筆者は商法大好き人間なので、やたらめったら色んな本をご紹介しますが、ご了承下さい。

初学者レベル(苦手な人向き)

基本書

 神田先生の会社法 <第21版> (法律学講座双書) は、内容が高度なわりに薄いという本なので、学修が一通り終わった方の「まとめ本」だと思います。

 初学者の方に圧倒的にオススメなのが、ストゥディアです。また書評をアップしますが、とにかくわかり易いです。(最)重要判例の要旨も引用されており、本書+論証集で、定期試験くらいならなんとか乗り切れるかもしれません。組織再編はさすがに薄く、これ一冊で司法試験まで!とはならないと思います。

判例集

 会社法は判例百選がとても良く出来ているので、初学者の段階から読むべきです。一部の判例(百選28・新株予約権の有利発行など)は難しすぎるので、学修が進んでから振り返って読みましょう。

入門書

 法学部出身の人でも商法は何故か苦手にしている方が多く、「純粋未修」の自分にとってはドル箱科目でした(変な苦手意識が無いため)。実務がわからないから親しみづらい!との声もありますが、そんなこと言ったらどんな法律も似たり寄ったりです。請負契約、結んだことありますか?強盗を犯した知り合いはいますか?

 とはいえ、どうしても商法が親しめない、という方は神田先生の入門書をオススメします。司法試験等を視野に入れた教科書ではなく、あくまで、会社法ってどういう法律か、ということを分かりやすく開設した本です。

演習書

※2020年9月15日 読者のsoさんのご質問により、追記しました

 本書か、伊藤塾さんのいわゆる「赤本-商法 (新伊藤塾試験対策問題集-論文 2)」が良いと思います。まずは条文操作に慣れることが大事ですので、こまめに条文を引きながら、本書に取り組みましょう。会社法は単なる条文あてはめにも点数がふられています。

 後述の通り、会社法の演習書については、Law Practiceが大変良く出来ています。また、会社法は(民法等に比べれば)範囲はさほど広くありません。そういったことから、初学者の段階では、本書や赤本など簡単めのものをほどほどに回すくらいでも良いと思います。

基礎レベル(司法試験対応)

基本書

実質二択

 これまではリークエ一択というムードが出ていましたが、田中先生の基本書が超・有力な対抗馬で、実質二択です。内容は、簡単に言ってしまえばリークエの詳しい版=田中先生、です。従って、この2冊を両方買う必要は全くありません。また、体系や文体にはそこまで大きな違いはありませんので、好みによって選択して下さい。

  1. コンパクトな本が好きで、足りない情報は書き込みで足していくぜ、という方→リークエ
  2. 情報量が多い本が好きで、いらない情報は読み飛ばしていくぜ、という方→田中先生

 数年前の司法試験に10番台で受かった筆者の友人は2.タイプで、江頭先生の基本書で「試験に不要な部分を」マーキングで塗りつぶしていった、と言っていました。まあ、当時はリークエが無かった、ということもありますね。

リークエ

 リークエは、扱っている問題意識は高いにも関わらず、薄め。という意欲的な本なので、芦部憲法ほどではありませんが、行間が若干広いです。従って、会社法が本格的に苦手な方は、田中先生の方が解説が丁寧な分、わかり易いと思います。

田中先生

 田中先生の基本書は、優先度が低い情報に★マークがつけられるという受験生感涙の改訂が行われたため、2.の使い方がよりフィットしてきた感じがあります。なお、筆者は散々悩んだあげく、リークエ+江頭先生で情報を足していく、という使い方をしていました。1.タイプですね。

その他

 上記2冊を書店で立ち読みしたけど、絶対にわからん!嫌だ!という人は、ストゥディアを読むに限りますが、それでもなおリークエ&田中先生が無理な方は、高橋先生他の基本書をオススメします。立ち読みしてみて下さい。

  

判例集

 会社法オタクになりたい人(いないか…)は、商法判例集がオススメです。判旨の引用が長く、(非常に高度な…)あてはめの練習になります。そんなことはさておき、「会社法判例の読み方」がとてつもなく良い本です。これまたいずれ書評をアップします。

 会社法の条文と同じかそれ以上に会社法の判例はとっつきづらいと思います。しかし、とっつきづらいからといって、最高裁判例の機械的な暗記はするべきではありません。例えば、新株発行の無効原因にかかる最高裁判例を、1つ1つ「これは無効原因、これは無効原因にならない」と暗記していく、等です。これでは永遠に判例が何を考えているかはわかりません。とっつきづらいままです。射程もわかりません。司法試験に「今まで見たことのない無効原因」が出てきたら、即アウトです。「会社法判例の読み方」は、

と同じく、判例の内在的分析-どのような利益衡量から結論を導いているか-時系列でみると、どの様に判例法理は進化してきたか-を考察する新コンセプトの判例集です。判例の実質的な考慮要素がわかります。射程もわかります。そして会社法がわかるようになります。著者の先生方も、新進気鋭中の新進気鋭(日本語わけわかりませんが)です。そんなに分厚くないですし、是非読んでみて下さい!

 

演習書

 こちらの記事でさんざん力説した、Law Practice 商法〔第3版〕がオススメです。

 答案の型だ!インプットっていうより書き方がわからねえ!という方は、「論文演習会社法」がとてもオススメです。現実的かつ優れた参考答案が満載です。高いですが、その価値はあります。

論証集

 予備校に通っていない人は、実質一択で工藤北斗先生の論証集でしょうか。もっとも、正直言いますと、刑事系ほどは良い出来ではないように思います。改訂により、組織再編における「公正な価格」の記載が充実しました。素晴らしい。ちょっと長すぎるように思いますが、おススメです。

 シケタイは長すぎる&独自説もありで、さらにオススメできません。論ナビ?ですか、伊藤塾に入るともらえる論証集は、有利発行該当性について論証パターンを3種類用意してあるなど、かなりレベルが高いと思いました。

応用レベル(上位合格を狙う方)

基本書

 不動の江頭先生ですね。ソフト・ローや税法等、司法試験についてはあんまり関係無いけど、実務上超・重要だぜ!という記載も充実しています。何より、一文一文が短く、論証向きであること、リークエとの相性が良いことが、受験生には嬉しいです。もっとも、江頭説は、有利発行該当性など、ところどころで少数説であることは、留意しておかなくてはいけません。

 対抗馬としては、大隅先生他の新会社法概説があり、こちらもかなり詳しいです(全然概説じゃない…)。脚注で詳細に解説するスタイルで好みが分かれると思いますが、気になったら立ち読みしてみて下さい。

副読本

 これまた、こちらの記事で力説した、会社法の学び方 (法セミLAW CLASSシリーズ)が超オススメです。リークエ+江頭先生、ではなくリークエ+本書も良い組み合わせかと思います。

 また、株価だとか、組織再編における公正な価格だとか、とりあえず数字はやめてくれーという純粋文系の方(筆者もそう)には、数字で分かる会社法がオススメです。リークエにもよく引用されていますよね。また、書評をアップします。

※2021年5月27日追記

なななんと改訂ですか!名著ですが、筆者くらいしか熱烈な読者がいないかと思ったのですが、うれしい限りですね。ぜひ読んでみて下さい。

演習書

 取り組んでいる方が多い「事例で考える会社法」ですが、商法大好き人間である筆者からみても、かなりレベルの高い演習書であると思います。本書の内容を正確に理解していれば、司法試験上位合格間違いなしです。いわゆる「京大本」も自主ゼミで取り組みましたが、これは完全にオーバースペックだと思います。良書ではありますが。

商法総則・商行為法

 これは実質三択で、どれを選んでもそんなに違いは無いと思います。森本先生の本も含めれば、四択ですね。筆者は近藤先生でした。非常に簡潔な、論証向きの文体です。田邊先生の本はやや詳しいので、辞書代わりにも使えると思います。

手形・小切手法

 これまた、実質四択です。筆者は早川先生でした。新世社の「イエロー」(潮見先生の本など)シリーズなので、読み慣れたレイアウトで安心感抜群です。最近改訂されたんですね!上記の近藤先生の商法総則・商行為法とともに、かなり薄いですが、司法試験にも十分対応できると思います。行間の狭い丁寧な解説が好みの方は、田邊先生の本が良いと思います。

番外編

 伊藤塾のシケタイシリーズは全部読みましたが、公法系、刑事系と比べると民事系の出来が良い気がします。特に、商法(総則・商行為)・手形小切手法は、そんじょそこらの基本書よりずっと詳しいです。なんせ、40年前の学説とかも載ってます(それが刑事系等がNGな理由でもありますが)。シケタイシリーズで、唯一最後まで後輩にあげなかったのが本書です。