適切な情報量
インプットすべき情報量が多すぎると、消化不良になります。というか、心も折れます。少なすぎると、行間を補わなければならず、結局よくわからん、となります(芦部憲法が良い例)。
というわけで、インプットのための教材、そのうちメイン・ウエポンとなる教材の情報量は、多すぎず・少なすぎないことが必要になります。1,2年も勉強すれば情報の取捨選択力が身につくため、自分である程度対応できるのですが、特に初学者の段階では適切な情報量の教材を選択することがかなり重要となってきます。その観点から、いくつかの教材についての感想を書きます。
判例六法 vs ふつうの六法
そういった意味で、判例六法は、初学者にはオススメできません。「判例と条文がたくさん載ってて、辞書代わりに良い!」と思って購入する人が多い(筆者もそうだった)と思います。しかし、初学者の段階では、六法の「どこに」「どの様な条文が」「どの様な順番で」並んでいるのか、を身につけることがまず重要です。
一度、判例六法の民法177条の欄でも見てください。次の条文(178条)がどこにあるのか、また、周囲の条文とどの様な関係にあるのか、サッパリわかりません。つまるところ、判例六法は、初学者には情報過多です。
趣旨規範本 vs 薄い基本書
法科大学院には、「法律学の森」を愛読している人もいれば、辰巳法律研究所の趣旨規範本を基本書代わりにしている人もいます。混迷の極みです。これはどちらもマズいように思います。前者は、明らかに情報過多ですし、後者は反対に情報過小です。
趣旨規範本も、1,2年の基礎的な学習を終えた、中級者向けの本と思われます。というか、この画像の帯にも「まとめノート」と書いてありますよね。綿密な基礎的学習で広がった知識を、いったんまとめる本が、趣旨規範本などの類の本です。
こういった本は、理由付けが端的すぎる(「なぜそのように解釈するのか?」という説明が無いか、非常に少ない)ので、初学者は、結局基本書を読むハメになります。基本書を読まないと、テストの時にうまく理由付けを書けなかったり、多少ひねった問題となると、まるで対応できないことになります。
まとめ
「判例六法」や「趣旨規範本」は、基本書や講義で「基礎知識が」「しっかりと身についた」人にとっては、有用です。基本ができている人であれば、情報量が多すぎれば(脳内で)自動的に情報を選別できますし、情報量が少なければ自動的に補いながら読むことができるからです。よって、これらの本は、基本書や講義で、ある教科について、全体や個別の論点がある程度わかったな、と思うまでは不要です。それから購入しても全く遅くありません。
やはり、初学者は有斐閣ストゥディアや日評ベーシックなどの、「薄いけど、説明・網羅性がギリギリ成立してる本」を繰り返し読むのが手っ取り早いと思います。