だいたい正しそうな司法試験の勉強法

30代社会人。「純粋未修」で法科大学院に入学し、司法試験に一発合格。勉強法・書評のブログです。

試験対策の勉強法-山かけのススメ

試験前は山をかけよう

 そろそろ法科大学院(や、法学部)では定期試験に向けた勉強モードに突入している時期だと思います。法科大学院の定期試験はなかなか厳しく、私の出身ローでも、3年間卒業率(?と言うのだったかな、要するに留年しないで卒業できる確率)は50%くらいでした。皆さんも危機感と戦いつつ勉強していることと思います。頑張れ!

 さて、自慢じゃないですが、私は、高校進学を諦めかけた中学3年生以降、まともな試験勉強を約20年していませんでした。大学(学部)は留年。しかも法律未修者。こんな私が定期試験を乗り切るためにとった方法は山かけです。自慢ですが、法科大学院は首席で卒業しました。山かけは素晴らしいです。山かけバンザイ。

ランク付けの悪影響

 定期試験(や、司法試験)の範囲は広く、多くの人は何から手をつけて良いかさえわからないのではないでしょうか。そんな人向けに予備校のテキストでは、各論点の「ランク」を示しています。私が思うところ、これは二重の意味で学習に悪影響があるように思います。

①ランクがたまに間違っている

 これは大きいように思います。会社法で言うと、「特に有利な価格(199条3項)」はBランク、またはB+ランクとされていると思います。既存株主の経済的利益の保護、資金調達の便宜との調和から~ というやつですね。確かに、(こんな安易な論証パターンで)簡単に判断できるような問題の出題可能性は少ないでしょう(平成19年新司法試験商法参照)。よって、B+。という理屈でしょうか。

 しかし、有利発行規制の趣旨には、公開会社と非公開会社で既存株主の利益はどのように違うのか、資金調達にかかる取締役の裁量をどのレベルまで認めるべきなのか等、会社法を理解するうえで避けて通れない重要な考え方が多数含まれています。出題可能性ではなく、体系的理解のための必要性でいえば、間違いなくAランクなのです。
 「あ、Bランクね」では、会社法の体系的理解からかなり遠ざかると思われます。シナジーを狙った資本提携や、敵対的買収に対する防衛策としての新株発行など、ちょっとひねられると途端に応用が効かなくなるのがその証拠です。

②読解力が落ちる

 司法試験では、事例解析能力、論理的思考力、○○法に関する基本的な理解、が必要とされています。これは平成30年司法試験民事系第2問(商法)の採点実感からの引用ですが、各教科に共通して必要なのが、「読解力」「思考力・表現力」「基本的知識」です。私は、初学者がまず身につけるべき(別の表現をすれば、ほとんどの人がつまづうく第一の関門)が「読解力」だと思います。

 単に日本語の文章を読む能力は、ほぼ全ての受験者が身につけているでしょう。ここでいう読解力とは、出題者の意図、すなわち出題趣旨を探り当てる力です。出題者、基本書で言えば著者、法科大学院でいえば教授が、何を重要な問題と考えているか。どんなことを聞きたいのか。どう答えるべきなのか。これを考え続けることが重要です。
「はい、これがAランクで重要なやつね」という餌付けをされ続けると、出題趣旨を能動的に探りにいくことが苦手になってしまうように思います。この様にして、

問題文に誘導的な記載があるにもかかわらず,論じる必要のない論点
を論じる答案や,必ずしも重要とは思われない論点を長々と論じる答案も見られた(平成30年司法試験刑法の採点実感)

というKY答案が生み出されます。

③中級者以上には有用

 なお、ランク付けは、基礎的な学習を終えた人(独学で言えば基本書通読×2+判例集と演習書を×1ずつ)にとっては、有用です。ああ、○○法の全体像がなんとなくみえてきた、これは重要そうだな。と思えるようになってから、そのことを再確認するのは良いことだと思います。

山かけは真剣にやろう

 前置きが異常に長くなってしまいすみません。要するに、ランクを盲信して試験対策にいそしんでも、Bランクと思ってあまり深掘りしていなかった論点の知識が必要な問題が出題されてしまったり、KY答案を書いてしまったりするわけです。そこで!私がオススメするのが、めちゃくちゃ真剣な山かけです。

山かけの方法

 簡単です。対象となる試験(定期試験でも良し、模試でも良し、司法試験本試験でも当然良し)の過去問を全部用意します。できれば、解説などは無い方が良いです。過去問を見ながら、問われている(であろう)論点を、どんどん抜き出していきます。論点名だけで良いです。基本書や論証集の助けを借りても問題ありません。ここまでで、1年分=2時間、10年分やると20時間くらいかかるでしょうか。

 これを、WordやExcelでまとめて、今年はどんな論点が出題されるかを、一所懸命考えます。これも2時間くらいでしょうか。合計22時間。以外と負担は少ないですね。私は毎回の定期試験でこれをやっていました。下記は、作った資料の部分図です。

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過去の出題傾向から、重点項目(山かけ)と、それに対応する演習書の問題番号を抜き出しています。

山かけの効用①体系的理解がすすむ

 上記の過去問分析を真摯にやっていると、「あ、この論点、そもそも忘れてた!」ということが続出するので、結局のところ、基本書等を網羅的に読んでいくことになります。また、「BないしCランクなのに出題されとる…」ということも続出するので、B以下ランク論点を見直し、深掘りすることになります。このような作業を通じて、体系的理解が深まります。

山かけの効用②読解力が高まる

 多年度の出題を検討することで、

例1 論点のレベル、数、配点

例2 理由付けや事実の評価をどの程度求めるか

例3 誘導する際、どのような表現を使うのか

例4 どこまでを基礎的な事項と捉えているのか

 など、出題者の癖を見抜く訓練ができます。この作業を繰り返すことで、「このような表現であれば→このようなことが聞きたいはず」という読解力が身につきます。これは非常に重要な訓練だと思います。

まとめ

 以上の通り、山かけは全然間違ったことではなく、真摯にやれば非常に良い勉強となると思っています。唯一残念なことは、山かけはほとんどの場合あたらない、ということです。すなわち、山かけは効果ではなくその過程に価値があります。

 是非、次の試験では山かけに取り組んでみて下さい!